第3話見えてはいるけどつかないもので
地面から浮き上がりつつ進むエメラダが話しかけてくる。
「主人殿、滝の麓までの道中は魔物の排除は妾に任してもらうが良いかの?」
いきなりの問いかけにびっくりしていると、にんまり笑いかけてくる。
どこから出したのかその扇子は。似合っているけれども。
「この濃い魔素量であれば大概の魔物には私も対処できると思うんだけど」
いささか軟弱者に見られたようで反論を試みる。
「いやいや主人殿、気を悪くせんでおくれよ。」
そういうとしなだれかかってくる。やめてください当たります。
「今の主人殿は妾を顕現させるのに魔素を使っておるじゃろ?体内の魔素量が減っていないように感じておるじゃろうが、実は今常に全力で減っていっておる。」
そういうとエメラダは空気中に光で絵を描き始めた。なんとなくエメラダの言いたいことがわかってくる。
「なるほど。今の私は魔素を常時周辺から貯蓄能限界まで補給されても溢れていない状況ということか」
エメラダにそう言うと自分で言っておいてなんだが恐ろしいものを感じる。
「びっくりするほど運が良いのじゃよ主人殿は」
事もなげにそう言うとエメラダは空中に翠色の小さな矢を複数作りだしては進行方向に飛ばしていく。
移動する先でエメラルドの彫刻と化した魔獣を回収しながら進んでいく。遠くに見えた滝に近づいてはいるのだが滝自体が思ったより大きかった為か一向に到着しない。エメラダと色々話をしながら進むのは楽しかったのだが答えてくれない事も多く存在する世界が違うことの弊害を感じつつも、このように長く話せるこの環境に感謝もしていた。エメラダは現界の食事が楽しいらしく限られた食材ではあるが拙い私の手料理に喜んでくれる姿は高貴な民ということを忘れるほどだ。道中エメラダが魔獣を彫刻にしまくるせいで食材の補給がままならないと相談したら、彫刻にせず魔獣を討伐するようになってくれた。味が好みでない魔物は以前と同じ彫刻になっているのには触れないことにしておいた。
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