第2話 199X年代
俺———
中学時代は友達と騒いでいる事の方が楽しくて、特に身だしなみに気を回した事なんてない。
県内でも中の上くらいの公立高校に入学すると、次第に興味は異性へと傾き出してくる。
中学まで整髪料すらつけた事のなかった俺は、友達に感化され、身だしなみに気を使い始めると、周りの態度にも変化が現れ始めた。……自分で言うのもなんだが、素材はよかったのだ。
高校2年の頃に初めて同級生に告白された。『かわいい子だな』と思ったけど、今思えば好きだという気持ちとは少し違っていたのかもしれない。断る理由もないままに付き合うと、それはそれで楽しかった。友達に勧められ、ギターを弾き始めたのもその頃からだった。
3年生になり部活に所属していなかった俺は校内でバンドを組むと、たちまち人気の先輩として下級生から有名になった。
学校生活に華を添えるイベント、文化祭や体育祭では後輩の女子から、写真撮影の嵐だった。一緒のいた友人が、ヘソを曲げるほどだ。
ただ、彼女がいたからか、後輩からは告白されたのは数える程しか覚えていない。今思えば、彼女がいるのに、それでも告白してきた後輩たちは、勇気がある子なんだと思う。
無事高校は卒業したものの、やりたい事が見つからないまま、なんとなく体育系の専門学校に進学を決めた。
卒業式から三日後、彼女から別れを告げられた。
———ああ、そんなものなんだろうなぁ。
俺にとっても彼女にとっても、恋人なんて高校生活に必要な、制服みたいなものだったんだなと、それ以上深くは考えなかった。
専門学校に通い出すと、俺はバイトを始めた。
地元の小さなカラオケ店だ。
歳が近かった嵐山店長とは妙に気があった。元々運動が好きだった俺は、嵐山店長にサーフィンを教えてもらうと、その魅力にどっぷりのめり込んだ。
加えてノリのいい専門学校の友人たちとも仲良くなると、遊びも段々とエスカレートしていく。
深夜までカラオケ店でバイトをして、眠い目を擦り学校に行くと、そのまま机で昼まで熟睡。
夜バイトがなければ、そのまま友人たちと夜の街へと繰り出して、朝までクラブで疑似恋愛を楽しむ日々。
週末になれば嵐山店長と海に行き、サーフボードで波と戯れ格闘する。
十代最後の二年間は、抑えていた欲求を解放し、ただただ楽しい事だけに夢中となった。
将来に対する不安も少しはあったし、やりたい事も朧げに見つかりながらも、目先の快楽に流される日々。専門学校も一年で中退していた。
そして気がつけば、俺が住む「W市内」で、ちょっとした有名人になっていた。
———良い意味でも、悪い意味でも。
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