第41話/緊縛
三節混『落陽』を振るう。
爆破による破壊が発揮されて、樹木の根を弾き飛ばす。
「伏間くん、『惑いの森』は何時抜け出せますか?」
聖浄さんが焦燥に似た声色でそう告げる。
周囲には緑が生い茂る森林の中だ。
根を張り、こちらへと向かい出す緑色の蔓。
俺は地図を開いて周囲を確認する。
辺り一面には『象』の文字でいっぱいだった。
その象は、この蔓や根だ。
獣や蛇の様に牙を剥いて此方へと向かい出す。
食肉植物と称される迷宮生物。
この迷宮は全ての植物が生命を喰らう魔物。
落陽を振り爆破による炎は植物に対して有効的だ。
聖浄さんの持つ盾は何らかの効果があるのか、蔓の生物は聖浄さんに向かう寸前で止まる。
何かバリアの様な障壁が出ていると見た。
「が、あああああああ」
絶叫が響いた。
俺はその声が鹿目メルルであると悟りその声の方に顔を向ける。
まさか、植物生物に食われているのか。
彼女は命令を順守するメイドになったが、危険性を考慮して術具を与えてない。
俺は武器を構えて彼女の声の方に顔を向けた。
其処には蔓に吊るされる鹿目メルルの姿があった。
蔓は芸達者にも鹿目メルルのボディラインを強調させる様な縛り方をしている。
いや、あんな緊縛の仕方は迷宮生物の知性じゃあ出来る筈がない。
「……なに遊んでんだよ」
自分で自分を縛って面白いとでも思ったのだろうか。
「遊んでいるワケじゃないッ!」
「鹿目」
「――――~~~にゃんッ!」
恥ずかしそうに顔を赤らめてそう言った。
「やっぱ遊んでるだろ、こっちは真剣にやってんだぞ!!」
「私だって真剣だにゃん!」
逆さ吊りでパンツ丸出しな奴に真剣だと言われても説得力ねぇよ。
まあ、あの蔓たちもそれ以上の攻撃はしようとしていない。
あのまま放っておいても問題無いだろう。
「まずは自分の心配だな」
俺は無数に伸びて来る蔓の蛇に向けて三節混を振り続けた。
「ふ、ふぅ……」
十分ほど叩き続けて、ようやく蔓の蛇が活動を停止した。
俺は息を吐いて地面に尻を付ける。
「疲れた……はぁ」
「お疲れ様です、伏間くん」
労いの言葉を貰って、俺は手を上げてそれに応える。
宙づりにされた鹿目メルルも地面に下ろされて一息ついていた。
「なあ、やはり、私にも術具を」
「駄目だ」
俺は首を横に振った。
「私はご主人に歯向かう事の出来ない命令権を握られている、それがあれば安全だろう?」
「聖浄さんはな。俺は関係ねぇよ」
あくまでも、命令権を持つのはネームプレートの裏に名前を書かれた聖浄さんのみだ。
俺は彼女に命令する権利は無い。
「少し休んだら、進みます」
それだけ言って、聖浄さんが眼鏡を外して顔を拭いた。
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