第8話/破壊
広間の中心へと向かうと。
ローブを被る人型の怪物が俺を感知して顔を向ける。
薄い膜の様なもので顔面は覆われていて、完全にその顔を認識する事は不可能だった。
まあ、これで人と同じ表情をしていたら逆にやりにくいから、それで良かったけど。
「じゃあ、やるか」
俺は三節混を構えて相手に近づく。
杖を上空に構えた怪物。宝石の部分が白く光り輝いて俺の方に向けて光を放って来た。
接触はしない方が良いだろう。俺は身を屈めて光から逃れる。
その光は地面に当たると同時に激しい音と共に抉れた。
「危な」
当たったら問答無用で破壊するのか。
俺は混の端を握ってリーチを伸ばす。
腕を思い切り振って三節混で叩き付ける。
すると簡単に体が吹き飛ぶ怪物。地面に叩き付けた。
地面に潜行していた蛇だか鮫だか分からない生物が牙を剥いて怪物に被り付いた。
「これで終わりか?」
俺は確認する。ガジガジと身を齧られて、首から先が千切れた。
案外簡単に倒せたものだ。
俺は安堵の表情を浮かべてその場から離れようとする。
さあ、赤い扉の先が出口なのかどうか確認しよう。
その直後だった。
俺の背中が猛烈に熱くなって、皮膚が剥げて塩を塗られた様な痛みが走った。
「痛ッ、がッ!?」
俺は地面に倒れて、慌てて後ろを振り向いた。
既に倒した筈の怪物は、やはり動いては居なかった。
だが、その怪物が握っていた杖だけは、一人でに動いていた。
「クソッ、なんだよっ!」
まさか杖に意志があるとは思わなかった。
左右に揺れる杖は、白い光を放つ。
俺は体を横に一回転して回避する。
その際に背中を地面に接着した為に痛みが再び体を走らせる。
「っ」
しかし流石に二回目だ。
最初から痛みが来ると思っていれば、最初よりかは耐性がつく。
俺は地面を蹴って走り出す。杖から放たれた光が俺の真横を通って地面に当たる。
けれど、今度は最初の方よりかは威力はなく、光は地面に吸収されるかの様に何事も無かった。
それを確認したが、詳しく調べる余裕はない。
宙を浮遊する杖に向けて俺は三節混を振り回して杖に向けて思い切り叩き付けた。
杖は半分に折れて地面に叩き付けられた。
けれど、杖の先端がゆるりと動き出す。
結晶が付いた側が動いていると言う事は、恐らくその結晶部分が動力源となっているのだろう。
「いい加減に、しろっ!」
俺はもう、早く休みたかった。
だから、渾身の力を振り絞って結晶部分を破壊した。
その一撃で、杖はばふん、と音を鳴らして結晶が周囲に散らばった。
「……は、は、っはぁ……」
息を漏らす。
油断大敵とはこの事か。
これからは、相手のみならず、それを握る武器にも注意しなければ。
俺は背中の傷がじんじんと響きながら、そう思った。
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