第5話/選択
「補填の内容です」
ピコピコとコントローラーを動かして、画面に何やら商人の様な恰好をした老人が出て来た。
「ダンジョン内に置かれている
と、真改が言う。
画面には沢山のアイテムの写真と情報が記載されている。
スクロールをしてみてみると、成程、数千以上の術具があるらしい。
正直、俺はダンジョンから出たかったから、術具だとか、そういうのはどうでも良かった。
「………おすすめあります?」
おすすめの中から選ぼうと思った。
画面を見つめる俺の隣に座る九十九さんが顎に手を添えて考える素振りをする。
「僕なら搦め手を選ぶね」
そう言ってコントローラーでアイテムを選択した。
それは絵巻の様な代物で、効果はダンジョン周囲のアイテムやモンスターの感知が出来るらしい。
「おれは、これ」
九十九さんのコントローラーを無理矢理奪う真改がアイテムを選択する。
それは一振りの刀だった、紫色の煙を放つそのアイテムの効果は『切った対象のなんらかの能力や機能を奪い、行使出来る』と言うアイテムだった。
「真改くん、脳筋だね~」
ははは、と笑う九十九さん。
俺はこのどちらかを選ぶのか考えて、九十九さんの方に決めた。
「ん、僕の決めた方にするんだ」
「えっと……真改、くんの選んだ方は、交戦する事と、接近して戦う事が前提なんで……俺は、このダンジョンから出るよりも、生き残る事が最優先なんで」
話しを振っておいて、九十九さんはなんとも興味無さそうにそっぽを向く。
そして、真改がボタンを押して、九十九さんが選んだ術具を選択した。
すると、天井に穴が開いて、其処から正方形の匣が出て来た。
それを俺に渡した時点で、空間が歪みだす。
「じゃあこれで補填は終了です。なので、ルートから外れる前の場所に戻すよ」
そう真改が言って俺は頷きかけた。
「いや、待って下さい。ルートに外れる前って、あの洞窟ですよね?そこだけは勘弁してください」
あの周囲には少なくとも門叶祝の配下である人間が徘徊している筈だ。
俺の願いに対して九十九さんが首を横に振る。
「先程も言ったよね。君の要求を聞き入れるつもりはない」
糞、駄目か。
仕方が無い。
最悪、元の場所に戻ったら身を隠せる場所に移動しないと。
「いえ、そのくらいなら、大丈夫です」
と、真改はそう言ってコントローラーを動かす。
「九十九さんは嫌でしょうけど、まあ、これはおれの善意です」
ありがたい……いや、ありがたいと言う言葉は、本来違うのだろうけど。
「それでは、えぇと……お兄さん。今度は正規のルートで来て下さいね」
最後に、真改はそう言うと、ボタンを押した。
その選択と同時に、俺の意識は暗転するのだった。
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