第5話 後半戦
あの後陸の家に泊まりに行ったけど、陸が思った以上にポンコツだった。踊れないってのはマジだったらしい。
なんとか形にしていったけど、結局全体練習での手本はほとんど女子にやってもらった。情けねえ。努力はしたってことを伝えて許してもらった。
盆休みも終盤に入った頃。後期補習の全体練に向けてダンスを完成させようという話になり、学校近くのイヨンに集まって相談することになった。
遅刻はまずいと思いチャリンコをかっ飛ばした。十分前にイヨンの前についた。フードコートを見渡すと、まだ小森さんしか来ていなかった。暑いなーなんて世間話を振りながら小森さんの対面に腰を下ろした。
「そういや、ペア決まった人っていんの?」
パーテーション越しに会話する。今年のはペアダンスではないけど、少しだけペアで踊る部分がある。
「私が聞いてるのは二組だけだね。溝口くんはもう相手決まった?」
俺は首を横に振った。
「ねぇ、よかったら私と組まない?」
「え、全然いいけど俺でいいの?」
誰も誘うつもりなかったし、くじ引きでいいやと思っていた。まさか小森さん、俺のこと……!?
「よかった、仲良い男子いないからさー私。溝口くんなら去年委員会も一緒だったし、誘いやすいなって思ったんだ。あとさ」
デスヨネー!勘違いも甚だしいわ。このバカ思考を悟られないように相槌を打ち、続きを促す。
「かなちゃんと吉田くんを組ませたいんだよね。絶対両想いじゃない?言語化難しいけどさ、わかるでしょ?」
陸と真宮さんはバスケ部とそのマネだ。クラスにはもう一人マネがいるけど、その子への接し方とは違うんだよな。だから小森さんの言いたいことはわかる。
「陸が真宮さんのこと好きな感じするのはわかるわ。そっかー、真宮さんもなんだ」
「あれは絶対そう。それでね、私たちが組めばあの二人もじゃあ組む?って感じになんないかなって思ってさ。私たちキューピッドになっちゃうかも」
そう言って小森さんが笑う。
「やっほー、二人とも早いね。なんの話してるの?」
「ペアダンの話ー」
一時ぴったりに陸と真宮さんが現れた。自転車置き場で会って一緒に来たんだとか。
「あぁ、決まってないやつはくじ引きにするんだよね?」
「そそ。ところで、私たちペア組む?って話になってるんだけど。二人は組まないの?」
結構ダイレクトに言うんだな。もっとさりげなく持っていくのかと思っていた。
「えっ」
「俺と真宮ちゃんが??」
真宮さんは目を丸くして固まってるし、陸は耳を赤く染めている。わかりやすすぎるだろ。中学生かよ。
「いいじゃん組めよ。せっかくなんだから」
俺がそう言うと二人は顔を見合わせてどうする?なんてやってる。クソ羨ましいな。歩、俺たちは彼女いないもん同士仲良くやろうな。
結局二人はペアを組むことになり、決まってない分をくじ引きで決めてフォーメーションは確定させた。二時間くらいで解散したんじゃないかな。あの雷雨の日よりは全然早く話が終わった。
そうしてすぐに後期補習の期間に入った。今日はダンス練の後に旗を描くらしい。
団旗もクラス旗も美術部(そしてセッキーの彼女)の清水さんがデザインし、その他の有志で描くことになっていた。けどほとんど人が集まらず、広瀬が困ってそうだったから陸と一緒に手伝うことにした。
教室に戻って机を並べ、真っ白な団旗を広げる。
「なんかさ。お前らに言っても仕方ないんだけどさ。俺らばっかじゃね体育祭に時間かけてんの。旗もだけど、ダンス練習してきてないやつもいたし、来てないやつすらいたじゃん」
広瀬が言うのは俺もわかる。俺だって広瀬に比べたら全然マシだけど、ダンスリーダー引いたせいで結構時間圧迫されたしな。
「それはショージキ俺も思った。まぁ後期は補習取ってないやつもいるから、来てないのは仕方ないけどね。でも俺らだって他のことしたいよなー」
陸の発言に広瀬と俺はうんうんと頷く。
「あとクラスTシャツの発注もさ、早くサイズ教えてって言ってんのに全然返信よこさないやついるしさー?それくらいはやってほしいんだけど」
「なんか温度差感じるよな。俺たち割と真面目にやってんのにな」
「それなー。六組七組は女子がほとんどじゃん?なんか前期補習のときに女子ばっか十人くらいで楽しそーに旗描いてたよ。そういう雰囲気じゃないもんね、俺らのクラス。オベンキョーばっかのやつが多いよ」
「確かに、協力的な感じはしねぇな。一組もそんな感じだったら楽だったのにな」
「マジで団長って忙しいのな」
「俺もこんな大変だと思ってなかったわ。愚痴ってごめんな。二人とも手伝ってくれてありがと」
「てか小松さんは来ないの?」
「小松さんは衣装作りの方行ってくれるらしい。そっちは結構人集まったんだってさ。多分今頃家庭科室でやってると思う」
上はクラTだけど、下は手作りなんだとか。
「なるほどな。じゃあ今日旗描くのって俺らだけな感じ?」
「石原と戸田っちが来れたら来るって。あと清水さんも手伝うって言ってくれたんだけどな。衣装の方行ってんのかもしんねぇ」
数分後、清水さんがタカティーを連れて教室にやってきた。
「暑っつ。マジであっついな教室は。パソコンだけ繋げばいいのか?」
「はい、データはさっき送信したやつなので、それを映していただけたら」
聞いてみると、原案をプロジェクターで黒板に映してなぞるらしく、それをタカティーに頼みに行っていたんだとか。
「はいよー。お前らいつやるのかって実は心配してたんだぞ。一組はマイペースなやつが多いし、団長も立候補じゃねえしな。その割にお前頑張ってるじゃないか」
「えへへありがとうございます」
広瀬が後頭部に手を当ててはにかむ。こいつこういうところあるんだよな。全く団長副団長そろってあざとかわいいかよ。
「でも清水がいるなら安心だな。男だけだと不安だからなぁ?」
「俺らもやるときゃやるっすよ!」
「本当か?」
そう話している間に、戸田っちと石原がやってきて、六人で作業を開始した。
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