第3話 夏休み開始!
夏休みに入り、前期補習が始まった。前期は強制補習だから実質授業みたいなもんだ。
前期は土日以外の二週間で、最後の二日は模試。後期は一週間で自由選択だから取らないこともできる。俺はどうせ家では集中できないから、取れる科目は全部取った。
前期補習五日目の今日、補習後にダンスリーダーで集まろうという話になっているけど女子二人がいない。
「すげー雨」
さっきまではまだ明るかったのに。もうどんよりと暗くなり、大量の雨粒を落とす空を見上げた。こんなに雨降ってんのいつぶりだっけ。
「朝晴れてたのが嘘みたいだな」
「なー。俺このにおい好き」
馬鹿みたいに雨が降ってるのに陸が何故か窓を開けた。雨特有のモワッとした空気が鼻を抜ける。
「おい窓開けんな雨入ってくるだろ」
「はいはい」
仕方ないって感じを出しながら陸が窓を閉めるけど、この状況俺が絶対正しいだろ。
「つーか女子どこいった?」
「わかんない。もう昼だし飯食って待っとこうぜ」
適当に窓際の席をくっつけて弁当を食べる。陸はパンを持ってきていた。もうエアコンは切れたけど、雨のせいかあまり暑くは感じない。
「ごめんごめんお待たせー!図書室でタブレット借りてきた。スマホより見やすいと思って!」
半分くらい食べたところで小森さんと真宮さんが戻ってきた。気が利くなぁ。
「ナイスー」
「私らもお昼ご飯まだなんだよね」
「食べながら決めよーぜー」
隣の机を合体させて、小森さんが真ん中にタブレットを置く。
「なんかもうほかの団は曲決めてて、振り付けも決めてるみたいなんだよね。なんなら練習始めてる団もあるらしい。私らめっちゃ出遅れてるぽい」
「マジ?まず曲何決めるところからだよな。パフォーマンスは五分だっけ?」
「うん。でも一曲に絞る必要はないらしいよ」
「だいぶ候補削られるよねー。ほかの団と被るのは禁止ではないけど、上手くバラけるようにしてるっぽい。
後から決めた私らが被せるのはちょっと厚かましいよね」
「そうだね。こまっちゃんたちはかわいいやつやりたいって言ってたけど」
真宮さんがそう言った。こまっちゃんこと小松さんは俺らの団の副団長だ。
「男ばっかでかわいい系踊るのはキツいだろ」
「縄跳びダンスは?」
陸がふざけてそう言う。男子だらけの縄跳びダンスはどう考えても見苦しい。
「笑いとるなら逆にアリだけどさぁ」
小森さんもノリで笑いながらそう返す。
「アリなのかよ!?でもどっちかというとなんかこう盛り上がる系の方がよくね?」
「だよね」
言い出しっぺの真宮さんも俺に賛同したところで、雨がさらに強くなってきた。バケツをひっくり返したような雨ってこういうことを言うんだろうな。
流行りの曲を数曲調べるけど、雨の音がうるさすぎてタブレットから出る音が聴こえない。
「雨エグいな」
「今警報出た」
小森さんがスマホを見ながらそう言った。
「そりゃ出るよなこの雨だったら」
「カッパない中帰るのはきついよねこれ」
「止むまで待った方がいいね。カッパあっても大変だよ」
こんな雨なのにカッパなしで帰ったら十秒で全身びしょびしょコースだ。遠くからゴロゴロと重低音が鳴るのが聞こえる。
「雷?」
「地響きエグい」
「あ、光った」
ドンガラガッシャーンという音にびっくりして無意識に耳を塞いでしまう。雷ってこんなエグい音鳴ってたっけ?
「えっ颯汰怖いん?」
陸がからかってくる。
「ちっ違う怖くねぇよ!」
女子二人の苦笑いがきつい。女子ですら全然動じてないのに。ムキになって否定するほうがマジでビビってるみたいじゃん俺。
そう言っている間にまた辺りが光って爆音が鳴った。
「え、近くね?」
今の、光と音ほぼ同時だったよな。なんて考えているとすぐに教室の電気が落ちた。真昼だとは思えない暗さだ。
「あー停電しちゃったね」
「私のスマホ懐中電灯にしよ」
小森さんがスマホのライトをつける。そうしている間もずっと雷は鳴り続けている。
「これはしばらく帰れないね。雨雲レーダー見ても四時くらいまでずっとこんな感じ」
「とりあえずクラスLIMEでアンケ取ろう。でも票が集まりそうなのって大体予想つくから、票揃うまでに振り付けとかも調べていこー」
流行ってる曲やダンスの定番の曲を数曲ピックアップしてクラスLIMEに流した。意外とみんな暇なのか、結構すぐに回答が返ってきた。
同時並行でダンス動画を漁って、使えそうなのを探す。音量を最大にしてギリギリ雷の音に勝つかなって感じだ。
「俺これ踊れる自信ないわー」
「まぁこれはプロが踊ってるからねー。簡単にしたり、アレンジ入れてオリジナル性狙うのも全然アリだよねー」
俺がそうこぼすと、真宮さんが簡単にそんなことを言う。
「それはちょっと俺ら無理なんでオネガイシマス」
「頑張っちゃうかー」
「
真宮さんがそう言ったのとほぼ同時に電気が付いた。電気が復旧したらしい。もうセンス光ってんじゃんなんて冗談をいいながら、女子二人がアレンジを考えているのを眺めていた。
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