ロードレース

 オリンピックと言ったらロード。ロードと言ったらオリンピック。

 なんでかって?

 そりゃ、長い長い歴史のある競技だからさ!

 オリピックにおける自転車競技は第一回から一度も途切れることなく続いているそうで、ロードレースは初期の三大会を除いて常に開催、近年ではオリンピック開催都市を紹介する意味合いも持っています。そう、いうなれば世界の車窓から――いや、

 

 世界の背中から。


 脳内では和やかな例の音楽が流れ始めますが、競技自体はすこぶるハード。なにしろ近代ロードですからゴリッゴリの潰し合いでございます。視聴順序は時間の都合もあって、女子、男子だったのですが、やっぱり男子から見たかった。

 男子の方の英語実況に戦慄しました。


 ブルータルなコースです。

 ええ。

 ブルータルですよ、ブルータル。

 

 辞書を引けば分かりますが、野蛮な、残忍な、残酷な、荒々しい、といった物騒な訳語が並ぶはずです。こんなワードはプロレス以外じゃそうそう聞けない――っていうか、公共放送の、レース前の段階ですよ? ツール・ド・フランスの出場選手が木陰で「あかん、暑いわ」って顔して休んでる時間ですよ?


 それもそのはず、今回の五輪ロードは笑っちゃうくらいハードなコースでした。

 獲得標高(レース中に登攀した高さ)は約五千メートル、男子は総距離二百五十キロ弱であります。ツールにも四千くらいあるって? HAHA! 真夏の日本だぞ。


 こう書いてもいまいちピンと来ない方もいると思われるので、なんとなーく分かるように具体的に説明しておきましょう。


 スタート地点は武蔵野の森公園。場所は東京の三鷹市らへん。

 そう。

 ドコ住んでんの? 調布。え!? 金持ちじゃん!! 田園調布じゃなくて調布市だよ! アッ……となるあたりです。

 そこで誰かが言いました。


「なあ、せっかくの東京だし、みんなで富士の裾野まで観光に行って、帰りに富士スピードウェイで遊んでこうぜ!」

「おおー、いいね。どうやって行く?」

「チャリで」

「……いいね!」


 よかねぇよ!?

 まあロードの世界大会なんて最下位でも心肺能力のケダモノしかいないので、二百五十キロくらい六時間もあれば……六時間って。


 ロードレースは男子も女子もすこぶる面白い展開だったのですが、ロードの楽しみ方は人それぞれであります。


 マニアックな(正当な?)楽しみかたを知りたい方はロードの基本を弱虫ペダルあたりで学んでもらうとして、私はやっぱり映像の素晴らしさを推したいのです。


 なにしろ小説を書くときは山ほど描写をいれたがる風景鑑賞術三級の私です。

 おいこの日本って国はどこにあるんだい? え? 住んでる? HAHA! 冗談は休み休み言えよ! みたいな美麗な位置取りは圧巻でした。


 随分むかし、トップギアの日本を走る特番でも思いましたが、日本のテレビ屋はもっと本気出して撮れ。すごいのいっぱい撮れるんだぞ。


 あ。レース?


 レースは……女子のアマチュア個人参加オーストリア代表アナ・キーゼンホファーさんですかね。ゼロkm地点からの大逃げ。勝負の綾もあったとはいえ、決まっちまったよ感がすごい。また、その後の、


「知らない人ほど分かるという。知ってる人ほど分からないという(意訳)」


 なんてコメントも、分かる……感がありました。

 それもそのはず、この方はケンブリッジで数学を学び現在はスイスで――また属性過多だよ……なんだこの大会……。

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