第15話

 長い夜が明けた。


 エイダは起きて着替えると、ハワードの部屋へ行った。

「おはようございます、ハワード様」

「おはよう、エイダ。久しぶりに深い眠りにつけました」

 ハワードは微笑んでいたが、疲れた様子がうかがえた。


「結局、レイラは離れの塔に幽閉することにしたと王が言っていました」

 ハワードは少し悲しそうな笑顔でそう言うと、エイダを見つめた。

「義理の弟のビリーには、寂しい思いをさせてしまうことになります」

「そうですか……」

 エイダは俯いた。


「そろそろ食事の時間です。エイダも一緒に食べませんか?」

「いいえ。召使いの立場で食事をご一緒にするわけには参りません」

 エイダは首を振ると、自分の部屋に戻っていった。


 朝食が終わると、ハワードがエイダの部屋に来た。

「ビリーには、レイラが病気になったと説明しました」

「……そうですか。まだ、お母様がいなければ、寂しい年頃でしょうに。でも、ハワード様の命と引き換えにするわけにはいきませんものね」

 エイダは、ハワードに微笑みかけた。


「エイダ、ありがとうございました。これで、もう命の心配はしなくてよくなりましたから、もうエイダもお屋敷に帰って大丈夫です」

「お役に立てて幸いですわ」

 そう言いながらも、エイダは後味の悪さを感じていた。


「よろしければ、今度は遊びに来て下さい。また、ビリーも連れて森でピクニックでもしましょう」

 ハワードはそう言って、エイダの手を取った。

「分かりました」

 エイダは微笑んでその手を握り返した。そして、城を出て馬車に乗った。


 エイダは自分の屋敷に帰ると無事、役目を終えたとだけ両親に伝えた。

「ちょっと、疲れました。私は部屋で休みます」

 エイダはそう言って、自分の部屋に戻った。

「ハワード様がビリー様と上手くやっていけると良いんですけれど、心配ですわ」


 エイダは部屋の窓から王宮の方角を見て、ため息をついた。

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