第14話
夜になると、城の中は静かになった。
エイダは自室で眠りに落ちそうになっていた。
そのとき、廊下を歩く音が響いた。
「何!? この殺気は!?」
エイダはハワードから貰った指輪をはめて、廊下にそっと出た。
何者かが、ハワードの部屋の方へ歩いて行く。
エイダは静かに、しかし素早くその後を追った。
「……」
ハワードの部屋の前に立っていたのは、ハワードの継母だった。
「どうされましたか? こんな夜遅くに?」
エイダは思い切って、ハワードの継母、レイラに声をかけた。
「貴方はエイダ!? こんな時間に使用人が部屋を出て良いと思ってるんですか!?」
レイラは何かを袖の下に隠した。
「なにを騒いでいるんですか? 私に何か用ですか?」
言い争う声で目を覚ましたハワードが扉を開いた。
「貴方、邪魔なのよ!」
レイラは短剣でハワードのことを刺そうとした。
「ハワード様、お気をつけて! その短剣からは毒の香りがします」
「分かった」
ハワードは短剣を躱し、レイラの手をねじり上げた。
「継母とはいえ、どうして私の命を狙うんですか?」
「簡単なことでしょう? 私の息子の方が王にふさわしいからよ」
レイラはそう言うと、短剣を自分の腕にあて、切り裂いた。
「助けて! ハワード王子に殺される!!」
レイラの声が静かな王宮に響き渡る。
「ヒール!」
エイダは、兵隊達がかけつける前にレイラの傷を治した。
「襲ったのはハワード様ではありません!! レイラ様がハワード様を襲ったのです!!」 駆けつけた兵隊達はお互いに顔を見合わせた。
「その証拠に、短剣を握っているのはレイラ様です」
「……母上。エイダが現れたので焦ったのですね」
ハワードはそう言うと、レイラの肩に手を置いた。
「王を呼んで下さい。私は継母に命を狙われております」
「ハワード王子……少々お待ちください」
兵達はレイラを連れて、王の部屋に歩いて行った。
「エイダ。ありがとう。これでもう、継母も私を殺そうとしていたことがごまかせなくなっただろう」
「いいえ。でも、継母とはいえ王子の命を狙うなんて、恐ろしいです」
エイダは俯いた。
ハワードは寂しそうに微笑んで、エイダの手を取った。
「これが日常でしたから。もう慣れました」
「慣れたなんて、おっしゃらないで下さい」
エイダは真剣な顔でハワードを見つめた。
ハワードは何も言わず、エイダのおでこにキスをした。
「王がお見えです」
「はい」
ハワードとエイダは、王の前で起こったことを報告した。
「わかった。ハワード、今まで証拠がないからと言って、レイラを放置していたことを申し訳なく思う」
「父上、私を信じてくださるんですね」
ハワードはホッとした表情で微笑んだ。
「レイラは、見た目がお前の母親によく似ていた。だから、つい懐かしい思いになってしまって、色々なあやしいそぶりを見過ごしてきた。それがこのような事件につながってしまったのだろう。見ないふりをした私にも責任がある。すまなかった」
王はハワードを優しい目で見つめている。
「レイラは城の牢獄へ入れよう。レイラとの息子は、私の血も入っているからこのまま城で生活させる。それでもいいか?」
「父上にお任せ致します」
ハワードはそう言うと、部屋に戻っていった。
「エイダ様、このことは内密に。家族にも言ってはいけません」
「はい、ハワード様」
エイダもハワードの後について、自室に戻っていった。
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