第11話

 ハワードはエイダを森に残し、城に帰っていった。


「エイダ様は美しいし、魔力も強い。私の味方になって下されば心強いのですが」

 ハワードは整った顔を少しゆがめてため息をついた。


「ああ、もう城か」

 ハワードはエイダから貰ったペンダントを服の上から撫でた。

 ほんのり、温かみがある気がする。


「ハワード王子、探しましたよ! どちらに行かれていたのですか?」

 裏の門の前には、執事のゴードンが眉間に皺を寄せて立っていた。

「ゴードン、悪かったよ。ちょっと森まで散歩に行ってたんだ」

「ハワード王子、あなたは命を狙われているんですよ!? 一人で森になど行かないで下さい!!」


 ゴードンは「まったく」と呟きながら、ハワードの後ろを歩いた。

「そろそろ、食事の準備が整っております」

「分かった」


 ハワードが食卓に着いた最後の人間だった。

「それでは、今日の恵みに感謝を」

 王と一緒に皆が感謝の祈りを捧げ終わると、昼食が始まった。


「ハワード、食事の時間に遅れるのは良くありませんよ」

「はい、母上」

 ハワードは素直に頭を下げた。


「お兄様、このお肉美味しいですよ」

「ありがとう、ヘンリー」

 腹違いの弟のヘンリーが、ローストビーフを勧めてきた。


「それでは、頂きます」

 そう言って、ハワードが自分の所に置かれたナイフで肉を切り取った時、エイダから貰ったペンダントが震えた。ハワードは嫌な予感に包まれた。


「……ゴードン、この肉を犬に食べさせて見てくれ」

 ハワードは自分が食べようとして切り取った肉をゴードンに渡した。ゴードンは庭にいた犬にそれを与えた。すると、その肉を食べた犬たちは泡を吹いて倒れてしまった。


「このナイフ、毒が塗ってありますね?」

 メイド長が青ざめていた。

「私どもには、分かりかねます」


「食事は、もう結構です」

 ハワードは食卓を後にして、自分の部屋に戻っていった。


「また、エイダ様に命を救われました」

 ハワードはエイダから貰ったペンダントを、服の中から取りだしキスをした。

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