第10話

「ハワード様、お待たせしてしまい申し訳ございません」

「エイダ様、来て下さってありがとうございます」

 エイダはハワードに会釈をした。


「この森で出会ったこと、懐かしいですね」

 ハワードが湖を見つめながら言うと、エイダも答えた。

「はい、あのときは事情があり名乗れませんでした。申し訳ありませんでした」


 エイダは頭を下げた。

「いいえ、エイダ様。顔を上げて下さい。あのときも先日も、命を助けて頂いてありがとうございました」


 ハワードが深く頭を下げたので、エイダは恐縮した。

「あ、あの、ハワード様にプレゼントをお持ちしたんですが、受け取って頂けますでしょうか?」

「プレゼントですか?」


「ペンダントなのですが、魔力を封じ込めております。お守りみたいな物ですわ」

 そう言って、エイダは小さな箱を取り出し開いた。その中にはオパールのように輝く魔石の付いたペンダントが入っていた。


「ハワード様は、命を狙われているとのことでしたので……気休めになればという所ですけれども」

 ハワードはエイダからペンダントを受け取ると、それを身につけた。

「ありがとうございます。それでは、私からのプレゼントもお受け取り下さい」


「え!?」

「命の恩人に、何か差し上げたかったのです」

 ハワードはエイダの左手の薬指に、真っ赤なルビーの指輪をはめた。


「この指輪は、祖母から頂いた物です。魔力を増幅させる力があるそうです」

「まあ、そうですか。魔力のことは……ヒールの魔法を使ったからご存じですわね」


「はい。魔力は特殊な能力ですので、秘密にされておいた方が良いかもしれませんが」

 ハワードは少し照れながら言った。

「おばあさまからは、大切な人が現れたら渡すように言われていたので」


「まあ、ハワード様」

 エイダは赤面した。

「エイダ様さえよろしければ、求婚をしたいと考えております」


 エイダは急な話に困ってしまった。

「それでは、これは婚約指輪ですか?」

「はい」

「……嬉しいのですが、私には重大な話過ぎて即答できません」

 ハワードは少し寂しそうな表情を浮かべた。


「父や母に相談させてください」

「良いですよ」

 ハワードは優しく微笑んだ。


「指輪はつけておいて下さい。嫌でなければ、ですが」

「ハワード様、お気持ちは受け取っております」


 エイダは赤い顔で微笑んだ。

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