第9話

 舞踏会が終わった。

 エイダの元にハワードがやって来て、薔薇を一つエイダの胸元に挿した。

「今夜は素敵な舞踏会でした」

「そうですわね」

 エイダは薔薇を撫でて言った。


「これは、一人の時にお読み下さい」

「はい?」

 そう言ってハワードはエイダに小さなメモを渡した。


「分かりました」

 エイダは渡されたメモを胸元にしまった。

「それでは、またお会いしましょう」

「はい、ハワード様」


 エイダ達は、屋敷に帰った。

「そういえば、何が書いてあるのかしら?」

 エイダは自分の部屋に戻ると、ハワードから渡されたメモを見た。


<明日の昼過ぎに、初めて会った森の泉でお待ちしています>

「まあ、これはどういう意味でしょうか?」

 エイダは少し考えたが、行くことに決めた。


「お母様、明日は出かけます」

「まあ、どこまで行くのですか?」

「ちょっとそこまでですわ」

 エイダは森に行くことは秘密にすることに決めた。


 翌日。

 窓を開けるとよく晴れていた。

 エイダは昼過ぎまではいつも通り、本を読んだり、ダンスの練習をしたりして過ごした。 昼食を終えると、エイダは出かけていった。


「お母様、お父様、それでは出かけてきます」

「気をつけるのですよ、エイダ」

「はい」


 森の中は鳥のさえずりや動物の鳴き声で賑やかだった。

「まだ、少ししか離れていないのに懐かしいですわね」

 エイダは森の中の湖に着くと、キョロキョロと辺りを見渡した。

「あ、あそこですわね」


 木の陰になっていたが、そこにはハワードの姿があった。

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