六話 交差する気持ちPart2

まさかの真実を得てしまった俺は頭の中が真っ白になった。俺は幸のことが好きなのに、より古くから自分のことを想っていたことを想像したら、心が痛い。でも、彼にはこう伝えるしかない。

「...たとえ、恭子が俺のことが好きだったとしても、俺にはもう心に決めた人がいるから...」

彼は驚愕した。それもそのはず、俺の好きな人情報は一切誰にも口出してないからである。つまりこの時に初めて自分の気持ちを他人に伝えた瞬間である。

「え、マジで?」

「まあ...」

2人の間にある空気はふと空虚な感じが流れる。そして、その流れを断ち切ったのは、浩介だった。

「...ま、とりあえず、飯でも食べに行かないか?」

「...そうだね」

俺たちはその空虚な屋上を離れて、無言のまま購買のおばちゃんがいつもいる場所へ向かった。俺はそこで財布から200円を取り出し、チョコチップメロンパンを購入した。そして、彼は150円でメロンパンを購入した。そのまま、さらに無言のまま、購入したパンを握りしめ、あの空虚な空気が未だ流れる屋上へ向かった。その間、昼休みの時間が半分過ぎていたせいだろうか、廊下に生徒たちが多くいたが、そんなの気にせずに屋上へ向かった。そして、またそこで座り込み、パンをちびちび食べ始める。特に何事もなく、ただ時間が過ぎる。その一連の流れの間、俺は浩介に言って良かったのかと悩みに悩んでいて、一切正解に近づいてなかった。そして、彼が切り込んできた。

「なあ、その好きな人って、誰?」

「...プフw」

思わず、笑ってしまった。

「いや、何笑ってんだよ!」

「いや、俺ら、今まで何も喋らなかったのに、急に切り出してきたから、ちょっとおかしくて...w」

「おいおい、それはないぜ。」

少しだけその場の空気感が変わった。少し心地よくなってきた。

「わかった、でも誰にも言うなよ?まだ出会ってすぐだから...」

「え、出会ってすぐ?」

「同じ部活の天堂幸だ」

その一言だけ、わざと声のボリュームを抑えた。この時はまだ出会ってすぐだったし、まだ仲良くない。そして、最善のタイミングで告白したいと思ってる。そういう節を彼に投げかけた。

「お前、一目惚れなのか...?」

「まあ、そうなるわな...」

「それ以前は、誰か...」

「いや、いなかったはず」

そもそも俺が幸と出会うまで一切恋沙汰なんて思ったことがない。これは断言して言える。しっかり覚えている。そして、そのあたりで五分前のチャイムが鳴る。俺たちは少し残っていたパンをむさぼり、すぐ教室へ向かう。そこでの会話は一切後悔ではなかったらしい。初めての経験だったが...



そして、午後の授業が片付き、ついに放課後。俺は恭子が来ることを伝えるために先輩のもとへ向かった。そして、その道中に顧問の先生に捕まってしまった。

「おい、賀翼!」

「はい、何ですか?」

「今日はちゃんと一年の最終下校までに帰るんだぞ?」

「はい!」

まさか昨日の帰りの時にお気づきになられていたようだ。つまり、もしかしたら先輩たちは怒られていたのではと思ったが、今日の朝練での瓜生先輩の気分を見ているとそんな気が感じられない。でも、一応謝らなくてはと思い、先輩たちのもとに向かおうとした。その時にふと思い出したことを先生に伝える。

「隼雄先生、今日新入生一名見学に来ます!」

先生はああそうかと言わんばかりにそのまま職員室の方へ向かった。それと対になるよう俺は先輩たちのもとへ向かった。

しかし、今日の部活がとんでもない修羅場になろうとはこの時は微塵も思わなかった。

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