五話 交差する気持ちPart1

俺は自教室へ向かった。古くからの親友、浩介の隣の席が俺の席である。そして、彼が俺に話を仕掛けてきた。

「なあ、賀翼〜昨日は楽しかったな!」

「ああ、そうだな。」

大したことのないただの会話。

「部活、どう?入学前から行ってたけど?」

「ああ、それなら、昨日に同じ学年の子が入ったよ。」

「おっと、マジか!女の子?かわいい?」

浩介の眼がガラリと変わった。でも、俺は絶対に渡さないからなと少し睨み返すように目を向け、こう言った。

「ああ、そうだけど」

「マジか〜いいなぁ〜...」

「浩介はもう一回バド、本当にしないのか?」

彼は高校に入る前から、いや確か中学のバド部引退式あたりからもうバドをやめて、新たな青春を見つけるんだと言ってたのを思い出す。

「...それが、まだ決まらなくてな〜」

「決まらなかったら、もう一回来いよ!」

確か前の人生では彼とも疎遠になってしまった。だから、彼とも絶対に縁は切りたくないのだが、なぜ彼はバドから離れたのか。その真意は未だ分からない。

「いや〜、それは無理かな〜...」

「...なぜか、教えてくれるか?」

あまり刺激しないよう丁寧に質問を投げかけた。この高等テクニックは未来でコンビニバイトしていた時に、クレーマー対処で培ったテクニックである。

「...じゃあ、絶対に秘密にしてくれるか?」

彼はなぜか周りを気にしながら、小声で俺の耳元でささやいてくれた。

「ああ、もちろん、秘密にする!」

俺も彼に負けじとより小声で攻める。そして、彼から明かされる真実。

「実はだな...」

そんな大事な局面に、後ろのドアをガラガラと開ける少女が来た。恭子である。そうすると、浩介はすぐに俺の耳元を離れ、恭子の方を見る。よく見ると、若干赤くなってるような気がする。

「おっはよ〜!!」

彼女はただ元気な声で、挨拶をする。それに負けじと俺も元気な挨拶を交わす。もちろん彼も。

「あ、賀翼、今日バド部行くからね!」

「ああ、わかった。見学か?」

「そう!」

「じゃあ、先輩と先生に伝えておくよ!」

「うん!...あと、昨日はありがとね...!」

彼女は以前の元気らしい満面の笑みで自分の席の方へ向かっていく。そんな時で朝のチャイムが鳴った。しかし、浩介はじっと睨むように俺の方へ向いている。だけど、担任の先生の挨拶で前を向く。俺が若干の違和感を感じつつ、朝のホームルームを終え、四時間もの授業を越えて、昼休みがやってきた。俺は弁当を持ってきてないので、授業が終わってすぐに購買の方へ向かおうとしたとき、浩介が少し険悪なムードを漂わせ、こう言った。

「ちょっと、こっちに来い...!」

俺は何だろうかと彼についていく。そして、やがて付いたのは、屋上である。普通解放されてない屋上、でもうちの高校は解放されてある。そこで、俺は彼に呼ばれたのだ。いや、待ってくれよ、俺に男の趣味はないって言おうと思ったけど、ぐっとこらえて、彼の言葉に衝撃を抱く。

「お前、昨日、恭子と何した?」

「え?普通にバドをしただけだけど...」

「まさかパーティの前にか?」

「うん...」

「...だから、汗だくで2人が来たんだな...」

「そうだけど...それがどうした?」

「お前、恭子のことが好きなのか?」

いやいや俺は断じて恭子のことは好きではない。というか、その一言を言った彼の顔が赤く照れているように感じられた。その様子に俺は察しがついた。

「いや、別に...そうではない」

「そうか...なら、良かった」

彼は安心したそぶりを見せた。俺ははかなりのビンゴカードを引いてしまったらしい。

「ふ〜ん...浩介って、恭子のことが好きなんだな」

彼はひどく動揺した。俺に初めて見せる動揺っぷりである。

「いやいやいやいや、そそそそんなわけないよよ〜...」

「いや、そうだろよ!」

俺は数分、彼をなだめた。そして、やっと会話ができるようになったぐらいで切り出す。

「いつ頃からなんだ?」

「...中学のとき」

「中学の?」

「1年」

「1年って、結構前じゃないか!?」

「その時になんか恭子と一緒にいると、変な気分になってたから、多分恋しちゃったんだなって悟った」

「え?恋しちゃった?」

「その時より前で、噂聞いちゃったんだ。恭子の好きな奴。」

「え?俺は知らんぞ?」

「それはお前が知らないのも当たり前の話だ。だって、あいつの好きな奴、お前だぜ?まあ、噂だけど...」

「え...」

俺は頭の中が真っ白になった。人生30年、加えて数ヶ月にて新たな真実を得てしまった...

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