第10話


 中は思ったものと全然違った。冒険者ギルドの中に入るのは初めてなのでもっと汚くて暗いものを想像していたのだが、魔道具の照明があり定期的に清掃してあるようで汚いということはない。もちろん綺麗かと聞かれるとそんなことはないのだが。

 想像通りな点といえば酒場のようなところが併設されているところぐらいだ。真正面には冒険者ギルドの受付があり、左の突き当りの方には酒場のカウンターが見える。まだまだ明るい時間だが今でも何人か飲んでいるみたいだ。でもどうやら冒険者の人ではないらしい、この酒場は一般人にも開放してあるようだ。

 他はどうだろうと周りを見渡すとやっと冒険者らしき人を見つけた。僕と似たような装備をしてる人が数人と明らかに高そうな装備をしている3人だ。

 

 「どうですか?」


 「想像とは全然違うよ。なんだか少し楽しいね」


 「そうですか。それじゃあもっと楽しい楽しい登録に行きましょう!」


 テーニャは笑いながら周りを見渡してる僕を先導した。近づいて気付いたが、ギルドの方の受付に近い方のテーブルでも食事や酒をとれるらしい。いくつかのテーブルに拭き残しが見える。

 僕は頭の中で毎日ここにきて朝食をとる姿を想像した。入る前の緊張はもうなくなってこれから起こる幸せな未来が楽しみになった。

 受付に着き、受付の方に登録することを伝えようとすると向こうから話しかけてきた。

 

 「こんにちは。依頼申し込みの方ですか?」


 どうやら依頼を持ってきた人に見えたみたいだ。確かに装備は自分の袋の中に入っているので完全に一般人に見えたのだろう。

 

 「いいえ。2人で冒険者登録に来ました」

 

 僕がそう言うと受付近くのテーブルから舌打ちが聞こえた。その方向を見ると、高そうな装備をした3人組のうちの1人だった。当然僕も受付の人も無視をして話を続けようとしたのだが。

 

 「それではこちらの規約書に目を通していただいて、こちらの書類の空欄の方に記入をお願いします」


 「はい。わかりました」


 書類を受け取り、目を通そうとした瞬間また舌打ちが聞こえてきて今度は声までかけられた。


 「アデラ、そんな奴は登録なんてさせなくていいんだよ!連れの嬢ちゃんだけにしときな!」

 

 3人の中で最も巨体の男が冷静な声だが、威圧するように言ってきたのだった。

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