第8話
町の喧噪で目が覚めた。まだまだ寝ていたい僕は仰向けから片耳を閉じるように体位を変え、もう少し寝ようと目を瞑ろうとするが今度は窓から差し込む光がまた僕の目を覚まさせた。
ここまで邪魔されるなら仕方がないと僕はゆっくりと身体を起こした。
こんな風に日差しが入ってきて起こされるのは何年ぶりだろうか、というか自分で起きる事すら久々な気がする。なんだかそう思うと気分がよくなった。
僕は服を着替えてある程度荷物をまとめ部屋を出て、テーニャの部屋をノックした。たまには僕が起こしてやろうというちょっとした悪戯心だ。
「テーニャ起きてるかー」
「先輩ですか?おはようございます。起きてますよ」
「おはよう」
「というか先輩にしては本当におはようですね」
「にしては、は余計だ」
「えへへ。すみません」
「まあ、とりあえず俺の方は準備終わったぞ。そっちは終わったか?」
「あー。それなんですけど、とりあえず今日は荷物もう一回全部まとめて1階で待っててもらえませんか?」
「全部?全部持ってくのか?」
「そうです。お願いします」
「わかったよ。じゃあ終わったら待ってるぞ」
僕はまた部屋に戻ってしぶしぶ別けた荷物をひとまとめにして、それを持って1階で待つことにした。テーニャが来る前に支払いを済ませようと主人に部屋代と食事代を渡した。今日はどうするか聞かれたがもしかしたら泊まらない可能性もあるだろうとわからないと答えた。
主人との会話が終わり数分するとやっとテーニャが来た。
「先輩、お待たせしました」
「おう。荷物は全部まとめたけどどうするんだ?」
「あ。それなのですが、よくよく考えたらこの町よりも冒険者するならいい町あるのでそっちに行こうかと思いまして」
「なるほどね。じゃあ今日は馬車に乗って移動するのか」
「そうです。そうです。でもその前に先輩の装備を整えましょう!この町ならいい人知ってるので!」
「そういうことね。じゃあそこまで道案内お願いするよ」
「任せてください!」
「いやー。テーニャ先輩はすごいなあ」
僕は頼れる先輩をおだてながら宿をでて、付いていった。泊まった宿とは対照的にどんどんと大通りの方に抜けていき、最終的に着いたところはかなり賑わっている通りにある店だった。
店の前の椅子には少しぶすっとした顔の若い男が座っており、どうやら店番をしているようだ。店の中は外から見える分だけでもかなりの種類の武具が置いてあり、中には明らかに人が使う物ではないような武器もある。
「お兄さん、お久しぶりです」
「あ。テーニャさん!お久しぶりです。今日は武器の整備ですか?」
「それは自分でやってるから大丈夫だって言ってるでしょ?」
「へへ。いやー僕ができる仕事ってそれくらいしかないもんで、いつかテーニャさんがまわしてくれるって信じてるんですけどね」
「打てるようになったらまわしてあげるよ。今日はそういうのじゃないの。この人の武具を選びに来たの」
「へー。この人のですか」
テーニャがそう言って紹介すると店番の男は椅子から立ち上がり、下から上に値踏みするように見てきた。そして難しそうな顔をしたがどういうものがいいかを訊いてくれた。
「えっと、お兄さんはなんか得意な武器とかあります?」
「いや、特には。というか武器に触るのはこれが初めてなんだ」
「そうですか。じゃあ一般的な剣にしておきましょうか。これ持ってみてください」
こうして僕はいくつかの剣を持たされて、自分に合った大きさや重さの物を選別してもらった。それが終わると値段と相談して皮鎧を選んだ。
「お疲れ様です。ていうかお兄さん案外力持ちっすね。その剣かなり重いはずなんだけど片手で振れるなんて、人は見かけによらないんだなー」
「ありがとう」
「手入れとかはテーニャさんが知ってるみたいだし、聞いてください。よかったらまた買いに来てください。テーニャさんもまた来てね」
「はーい」
「また機会があれば来るよ」
こうして武具店を後にして、駅馬車に行った。
テーニャが言うには何回か駅を経由していくので結構な日数がかかるらしいがここより冒険者がやりやすい町にいけるらしい。
僕は期待を胸にまた馬車に揺られていった。
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