第6話


 2人で冒険者になることを決めると動きが早かった。出発は明日でもよかったのだが、テーニャの強い希望で準備が出来次第すぐに行くことになり。テーニャは1時間ほどで荷物をまとめ、かなりの距離を歩くからと一緒に早めの夕食を取って寮をでた。


 薄暗いなかを僕とテーニャは馬車の通る道に戻るために、目印を頼りに進んでいく。いつもこんな時間に通ったりしないから、知らなかったが目印のところに淡い光がついて幻想的な風景になっていた。

 僕が時々その風景を眺めて立ち止まるとテーニャは僕の方を見て、最後には早く抜けないと暗くなってしまうと僕を急かした。暗くなるとさすがにまずいので、少しだけペースを上げて付いていくといつもよりも早く馬車道に戻れた気がした。馬車道に戻るとテーニャはふうと少し息をついて僕に声をかけてきた。

 

 「やっと抜けれましたね。景色がいいからって時間をかけると夜になっちゃいますよ?」

 

 「すまんすまん。こんな時間にあそこを歩くことなんてないもんだからついつい見とれちゃったよ」

 

 僕は正直に答えて、謝った。そうするとテーニャもなら仕方ないと笑ってくれ、2人で馬車道を歩き始めた。

 ただただ真っすぐ伸びているだけの道を歩きながら、僕は少し気になっていたことを訊いた。

 

 「テーニャは冒険者をやってたって言ってたけど、あれって本当なの?」


 「本当ですって。ていうか信じてくれたから連れて行ってくれたんじゃないんですか?」

 

 「まあ旅は道連れっていうだろ?だから嘘でも2人の方が心強いなって思っちゃったんだよね」

 

 「そんな理由で……まあ私は付いていけるならそれでいいんで。いつかきっと私が来てくれてよかったって思う時がきますよ!」

 

 「ならいいんだけどな」

 

 「まあ待っててくださいよ!」

 

 テーニャがそんな宣言をするとすぐになにかの気配を感じたのか少し誇らしげな顔をして、持っていた荷物の中から何かを取り出した。


 「どうやら先輩の感謝するときが早くも来たみたいですね」

 

 「ん?どういうことだ」


 「まあ見ててくださいよ!」

 

 テーニャは取り出した何かのスイッチを入れるとパッとひかり、それをゆっくりと振りながらすみませんと声を上げ始めた。

 しばらくそうしていると、後ろから何かが近づく音が聞こえ始め、だんだんと馬車が見えてきた。そしてだんだんと減速して近づいてきて、僕たちの前に止まった。

 

 「どうやら本当に感謝するときがきたみたいだね」

 

 僕が少し笑いながら言うとテーニャもそうでしょうと誇らしげに笑った。

 

 「どうしたんだい」

 

 御者が言った。

 

 「私達この道の向こうの町に行こうと思ってるんですけど、乗せてもらえませんか?」


 「そういうことかい。あと少しで着くんだが、値段は正規の値段を貰わないといけないんだ。それでもいいかい?」


 「はい。先輩大丈夫ですよね?」


 「ああ。もちろんだよ。御者さんお願いします」

 

 「あいよ。じゃあ乗ってくれ。お金は向こうでもらうよ」

 

 「ありがとう」

 

 お礼を言って馬車に乗せてもらい。残りの時間をゆったりと過ごすことができた。

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