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第5話
自室に戻って、貰った3つの袋を確かめるといつもの給料の2倍と銀と魔石が入っていた。
銀と魔石の方は所長が、僕が困らないように換金用にくれたのだろう。
強面で怒ることも多い所長がこんなことをしてくれるなんて、とても嬉しかった。僕は3つの袋を持っていくカバンに入れて出発の準備を完全に終らせた。
またそれと同時にやってきた少しの罪悪感を忘れるために、眠くはないけれど今日2度目のベッドに入った。
ドンドンという扉を叩く音と高めの声で目が覚めた。窓を見ると陽が上りきって見えない位置にあるみたいだ。いつもなら起こしてもらえたりするものだから、ついつい寝すぎてしまったみたいだ。
なぜかわからないけどテーニャが来たみたいだ。まだ明るいうちに起こしてもらえて運がよかった。体を起こしながら僕は部屋に招き入れた。
「入っていいよ」
「失礼しまーす」
心なしか悲しい顔をしたテーニャが部屋に入ってきた。
「先輩、辞めちゃうって本当ですか?」
「ああ、1時間もしないうちに出るつもりだよ」
「今からでもやめれませんか?」
こんな風にテーニャに言われてよかった。
「大分前に決めてたからね、今更やめないよ。それにここに居たって危ないってこともわかったからね」
「でも、先輩研究一筋だったじゃないですか!今更他の職になんてつけるんですか?」
「それは大丈夫さ。奇跡的に手に入れたこの力で冒険者をやるつもりなんだ」
「冒険者って、そんなに簡単な仕事じゃないですよ!やめましょうよ。ね?」
腕をまくって力こぶを作るふりをする僕に、テーニャは少し呆れた顔をして否定する言葉を投げかける。
ここまで引き留めるなんて、心配してくれているんだな。
「大丈夫だって!心配してくれてありがとうな」
「心配とかじゃ……じゃあ私も連れていってくださいよ!それができるならなってもいいですよ!冒険者」
「なってもいいって。ていうか簡単な仕事じゃないって自分で言ったのになるつもりか?」
「私は昔冒険者やってたんで、先輩みたいな初心者とは違うんですよ!」
「そうだったっけ?」
「そうですよ?」
テーニャを連れて行くのは正直嫌だけど、冒険者になったことのある知り合いがいるのは心強いと少し打算的に考えてしまっている自分もいる。
まあ嫌になればまた戻るだろう。
「じゃあ成るか2人で冒険者に!」
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