第3話

そこそこの時間をかけて、寮の前に着いた。健康にはいいのかもしれないが、さすがに少し遠すぎる気がする。やめるとなると、だんだんとそんな風に思えてきた。

 まあ寮からでて街にいくことなんて、あまりになかったから、働いているときは何も感じなかったのだけど。


 そんなことを考えながら、さっさと寮に入り、自分の部屋を目指してテクテクと歩いていく。もう結構な時間だけど、まだ仕事が終わるには少し早いせいで、誰もいない小奇麗な廊下に、少し寂しい談話室、そんないつもと違う光景を抜けて、やっと自分の部屋に着いた。

 昨日に出る準備を終わらせてるせいで、大分寂しくなった部屋に手荷物を投げて、ベッドにダイブする。

 このベッドからは離れがたいな、なんて思ってしまう。

 ベッドのせいだろうか、やめてよかったのかなんてことまで考えてしまう。悪い癖だななんて思うが仕方ないかもしれない。これから泊まるであろう、安宿にはこんなに良いベッドはないだろうし、そもそも野宿だってしないといけないかもしれない。

 


 誰かの話声で目が覚めた。

 嫌なことを考えてるうちに、眠ってしまったみたいだ。声の主達は研究者たちだろう。食堂で晩御飯を食べながらする雑談が聞こえている。きっと所長もいるだろうし、なんとなくお腹がすいてきた気がするので、混ざることにした。

 自分の部屋から出て階段を降り、食堂に向かう。誰の声かもわかるくらい、声もだんだんと大きくなってきた。食堂に入ると、いつもの席に所長がいる。僕をみて、少しはにかみ、手で僕を招いてくれる。

 僕は手招きに従って、急ぎ足で所長の元に向かった。

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