第18話

「ふぁーーあ、」


俺は珍しく早くに目覚めた。


両隣にはアリエルとイリーナがですやすやと眠っている。


全裸で


俺のムスコがムクリと起き上がる。俺は鎮めるように深呼吸をする。


それにしても


俺はアリエルとイリーナを見る。


「可愛いな」


俺は二人を撫でる。二人は良い夢でも見ているのか、撫でると嬉しそうに笑顔になった。


その笑顔にドキッとさせられてしまう。俺はこいつらのことが好きなんだな……


はじめての感覚。今まで恋というものが分からなかった。でも今は分かる。今のこの感覚。二人のことを考えると心臓の音が周りにも聞こえそうなほどうるさい。


俺は気付かれないようにそっと二人の頬にキスをした。


俺は自然と空を見上げた。


空は青く澄んでいる。


そこにはワタアメのような白い雲と






漆黒のドラゴン、黒龍が悠々と飛んでいた。













「………ん、うーん………あれ?」

「お、起きたかアリエル」

「うん……え!?あ、………」


アリエルは自分が服を着ていないことに驚き、昨日のことを思い出したのか顔が真っ赤になってタオルケットで身を隠した。


そうされるとこっちも恥ずかしくなる。


「もう、何イチャイチャしてるの」


いつものように魚を取りに行っていたイリーナが帰ってきた。


「お、おうイリーナ。今日もありがとな」

「じゃあ頭撫でて」


顔をずいっと近づいて、上目遣いで嘆願してくる。


可愛いな


俺はそっと手を伸ばしてイリーナの頭を髪をなぞるように撫でる


「ふふん~♪」


イリーナは嬉しそうにニッコリと笑った。


可愛い


「さ、朝飯食うか」









「あ~疲れた~」


森の中を歩き続けてあれから3日、未だに森を抜ける気配がない。


「ホントにこの世界に街とかあるの?以前他の天使が召喚されたのが100年以上前だから、もう滅びてるんじゃないの?」

「いや、あるだろ。………多分」


アリエルから溜め息が漏れる。こればっかりは仕方ないだろう


「そういえば、なんで川から離れてこっち側に来てるの?」


今で、俺達は川に沿って歩いてきた。全っ然街につかない。もう、意味ないんじゃね?と、思って見渡していたら山があったので俺達は今その方向に向かっている。


「山を目指してるんだよ、上から見れば何か分かるかもしれないからな」


「食糧は?」

「だから魚一杯取ったろ?」

「捨てたけど?」


……………………捨てた?


「はははー、今なんて?」

「だから捨てたって」

「何を」

「魚を」


「……………」


飯がないっ!!!


「なんで捨てたんだよ!?今日の飯は!?」

「いや、腐ってたし、ご飯は……なし?」

「おい!それじゃあ夜の体力は‥‥‥‥‥」

「っ!!」

「♡♡♪」


ごほんごほん。ま、まあ夜のことは置いといて今は飯だ。


「この辺に食える奴とかいねーのかよ」

「うーん、」

「あ、ドラゴンって旨いかな?」

「「ドラゴン??」」


「前に見たんだよ黒龍。あれだけでかかったら食糧も困らないだろうしさ」


黒龍はでかかった。10m以上あったよなー。


「だいたいその黒龍はどこにいるのよ」



俺は無言で斜め上に指を指す。


アリエルとイリーナはつられて顔を指差す方向に見上げる。


俺が差したところは今目指している山の頂上だ。


そこに



悠々と眠っている黒龍がいた。


「………倒せるの?」

「………」


遠くからだが、明らかに強者の風格を醸し出している


「…………頑張って♪……痛い痛いっ、ギブギブ!」


関節をきめられてしまった。あー、腕がもげるかと思った。



「あれ?イリーナは?」


いつもこういった時に止めてくれるイリーナがいないことに気が付いた。


「そういえば、どこ?確か黒龍を見てから………」


俺達は顔を見合わせる。


「「黒龍のところっ!?」」  


俺達はイリーナを止めるために全力で走った。











「…………何者?」


黒龍は自らにかかる殺気を感じとり、首だけ持ち上げた。


「流石だね、黒龍って。あれだけの殺気で気付いちゃうだなんて」


目の前に黒髪の女の子が堂々と現れた。この気配は悪魔か……


悪魔と闘うのって何年ぶりだっけ、100年?どうでもいいか、考えるのめんどくさいし、


「…………昼寝の邪魔をする気?…なら許さない」


そういって私は少し魔力を高める。この程度の脅しで大抵、というよりほぼ全ての生物は萎縮して動けなくなる。


なのに……


目の前の悪魔はそれに動じる様子もなく


「ユウトが食べたがってるから、料理してあげる♪」


おぞましい笑みを浮かべた。


「……暇潰しにいいか」


私はのっそりと立ち上がる。刹那だった。


悪魔が私の目の前で鎌を振りかぶっていたのは。


「………無駄」


悪魔は私の首を斬ろうとするが、それより早く魔法を放った。


しかし、悪魔はそれに気付いた様子もない。


それじゃあ、死んで。私の昼寝を邪魔した罰で。


コンマ1も満たないうちに、黒炎の矢が悪魔に向けて四方八方から放たれる。


「………っ!!」


悪魔はすぐに察したがもう遅い。これは100本もあるのだ。避けることは不可能。



私はもう一度を昼寝を再開す………


ガキッーーーンっ!!!


悪魔の鎌と私の爪が交差する。


(………めんどくさい)


目を瞑る前の一瞬で見えたが、悪魔は一太刀で私の『黒炎のヘルフレア・アロー』を全て消滅させていた。


(……だったら)


「『黒炎のヘルフレア・ブレード』」


今度は無数の黒炎の刃が現れる。


「『剣舞の舞』」


黒炎の刃は乱舞を興すかのように対象に向けて飛び出していく。


「さっきの矢が剣になっただけだね」


また、悪魔は鎌で凪払おうとするが、


「……っ!?」


少しの刃にしか凪払えず、他の刃を食らってしまう。しかし、流石に致命傷ほどの傷は与えられず、どれもかすり傷だった。


(……あの直後に体をひねって、避けた)


あの超人的な判断力と瞬発力は並みそれた悪魔ではできない。余程高位な悪魔なんだろう。


(………めんどくさい)


「『黒炎のヘルフレア・ブレード』」


さっきは様子見で、10本しか作らなかったが、今回は10


「あははっ、流石ドラゴン」


私は悪魔の去勢を無視して、「剣舞の舞」を発動させた。




















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