第10話

私は分からない。何故あんなことをしたのか。


先程の記憶が蘇る。


ユウトとのキス


それは一瞬だったが、何故しようとしたのかは分からない。


煽りでカチンときたから?


それとも、少しでも役に立とうと思ったから?


わからない



ちらっとユウトの方を見る。いつも通りのやる気のない顔だ。


ユウトはこちらが見ているのを知ると、少し顔をあらめ頬をポリポリとかいた。こちらも恥ずかしくなってすぐに目線をはなす。


これが恋なのか?いや、そうではない。


だって私の恋人は私を守ってくれる王子様だから。あいつとは正反対だ。


最初あった時だって、糞やろうだと思ったし。次に召喚されたときだって……


イリーナとユウトがキスをしたことが思い出される。



ズキリ


自分の胸を押さえる。胸の奥がなにやらモヤモヤして、煩わしい。


どうして?




私は今まで自分を偽ってきた。父親と母親が偉大であったため、期待も大きかった。それに応えるため毎日努力を惜しまなかった。それゆえ強くなった、妬みも打ち返せるほどに。でも、私は一人だった。近づいて来るものは皆媚びを諂うため。単に友達になろうとするものはおらず、私は仮面を被ることにした。才色兼備で誰からも慕われる生徒会長。誰からも慕われてはいたが、気を許せる友達と呼べる存在はいなかった。


だから、最初本性を見せたとき、死んだと思った。恥ずかしくて涙がでた。正直、あの時彼がどんなスキルでも良かった。たとえそれがであったとしても。というか最初見たときから分かっていた。


私は仮面を被って彼に接した。でも、何故か、だんだん、疲れてきたのか、それとも別の理由があるのか、



仮面を外したくなった。



それはドキドキしたし、嫌われたとも思った。しかも、久しぶりに大きな声で、荒げてしゃべった。その自分の声が恥ずかしくなって涙がでてしまった。正直こんなの理解出来ない人がほとんどだろう。私にとっては引っ込み思案の人が大勢の前で演説をするようなものだった。


私が小さく丸まって恥ずかしがっていたとき、彼は何故かこっちにきてポンと肩に手を置いた。そしてニカッと笑った。


多分これは凄い意味もないんだろうけど、私にはそれがとても嬉しく、でもむず痒く。


素直になれない素の私は彼に「うるさい」と返した。





もう一度私は胸を押さえる。本当はわかってる。ただ認めたくないだけ。最初っから私はユウトことが好きだってことを。











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