第8話
「はあぁ、死ぬかと思ったぁ」
「そうだね」
現在、俺達は濡れた体を温めるため、焚き火をしている。ついでに魚も焼いている。
服も濡れたため、俺はパンツ一丁、アリエルやイリーナは下着姿になっている。正直いって、目のやり場に困る。
「で、これからどうするつもりなの」
「………寝たい」
「今の話じゃないわよ!これからのことよ!」
「これからねぇ……そういやお前らはユニークスキルとか持ってるのか?」
「「……ステータス」」
二人同時に唱える。
「あー、私はないなー」
「私も」
ないのかぁ。このままだと死ぬ運命だな
「はぁ、とりあえず街でも目指すか」
俺はボソリと呟く。
「そうしましょ。私はそこで別れるから」
「うーん」
街に行ったらなにしよう?冒険者?
「安心してね、私はあなた奥さんだから、ずうっと一緒だからねー」
「絶対ないな」
酒屋みたいなのでも開いて、経営でもするか?アリエルとイリーナは可愛いからすぐに人気で
「.........本気でそう思ってるの?」
「(人気で)そうだな」
いや、料理人がいない。……雇えばいいか。でも、どうやって……なるようにはなるか、
「私のこと好きじゃないの?」
「多分」
いや、でもそうすると俺のヒモ生活がなくなる。どっかの貴族と知り合うためには、高級なbarでもたてたほうがいいのか?そこで常連になってただ酒飲みながら、金持ちと知り合っていけば…うん、いいな。
「ユウトぉ?」
イリーナに振り袖を掴まれて、思考を停止する。え、なんで泣いてるの?......俺なんかしたっけ?
「ユウトぉ」
「は、はい」
イリーナはねだるようにこちらを見てきた。
「....私を殺して」
.・・・・・・は?どうして?
「私を殺してよぉ」
「ちょっと落ち着け、なに言ってるんだ?」
「だって、だって私はユウトにとっていらない存在なんでしょ?いきる価値ないんでしょ?」
いや、なに言ってるの?全くそんなこと思ったことないんだけど。
「そんなわけないだろ?俺にとってお前は必要なんだ」
そうじゃないと美少女看板娘としての売りがなくなるだろ
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと」
「そっかー♪」
イリーナは嬉しそうに笑った。
...........することがない。
あたりはもう暗くなってきており、動くのは危険だ。でも本当にすることがない。
「ねえユウト。ユニークスキル解放条件っていうのがあるんだけど...」
イリーナが急にこんなことを言ってきた。それに続けてアリエルもあるっと言ってきた。
イリーナとアリエルはもともと強かったんだよな?じゃあそのユニークスキル解放したら、何もしなくても高難度のクエストとかクリアして報酬ガッポガッポじゃね?よし
「解放させよう。条件ってなんだ?」
俺は二人の手を握って聞く。
「「えーっと、ユウトのレベルが100になる」」
「おやすみ」
「ちょい待て!!」
アリエルに襟を掴まれる。
「いや、無理だから。100とか無理だから。ていうか働くのが無理だから」
「駄目よ!こっちだって強くなりたいんだから!」
「いくら俺が天才でも働くのは無理!」
「天才なら働けよ!それが無理ならほかの方法でも考えなさいよ!」
「!!!」
俺は急に立ち止る。しかしずっと襟を引っ張られていたためアリエルと一緒に転ぶ。
が、今はそれどころじゃない。俺はアリエルの肩を掴む
「お前...」
「え?い、いやちょっと」
アリエルは俺の手を払いのけようとするがそれは叶わなかった。
「ちょ、やりすぎたのは謝るかー
「天才か!?」
「.......は?」
「いやー、働きたくない一心でそんなこと考えたことなかったわ」
「え、どういうこと?」
「なんかいい方法でも思いついたの?」
「そうだ!」
「どうするの!?」
アリエルは興味津々で聞いてくる。
「それは!」
「それは~?」
「何もしないことだ!」
「痛い....」
俺は殴られた左頬をさする。
「大丈夫?」
イリーナは濡らした布を使って、患部を冷やしてくれる。さすがに氷はないので少ししか冷えないがまあ仕方ない。
ちらっと隣で倒れている俺を殴った張本人のアリエルを見る。
アリエルは俺が「何もしないことだ」と言ったとき、無言で俺を殴ってきた。右ストレートは綺麗に俺を宙に浮かせた。
アリエルは無言近づいてきて、もう一度俺を殴ろうとしてきたが、イリーナに止められた。あの時のイリーナの顔は一生忘れないとともに絶対怒らせては生きないことを心から誓う。
「それで、何もしないってどういうことなの?」
「ああ、それか」
人間の体は死なない限りどこかしらで働いている。分かりやすい例で言えば心臓や肺、脳とか。まああんまりよく分からんけど、心臓は心肺停止とかにならない限り”働いてる”はずだから正直何もしなくいいって訳。なんならいえば、睡眠は体を動かすために休めるよう働きかけているとか思ってたらもっと効率良くなる可能性がある。
「流石だねっ!」
「まあな、」
よっしゃあぁーー!!!これで成功したらもうニートで暮らしていける!
「てことで寝るか」
「うん、」
俺は横になる。その隣にイリーナも横になる。ちらっと横目でみるがやっぱり美少女だ。
「どうしたの?」
俺の視線に気づいたのか、不思議そうにこちらを見てきた。なんて言おうか迷っていると
「もうしかしてシたくなった?」
ぶぅっっーーー!
ちょ、何言ってるのこいつは。そういうのは好き同士でやるもんだろ。.....あれ...イリーナって俺のこと好きなのか?...そういえば俺にキスしてたよな?あれ?
俺はイリーナの方を見る。
「イリーナってさ」
「なに?」
俺のこと好きなのか?
と言おうとしたが声にでない
「えーっと、あの時ってその翼使ったら逃げられたくね?」
「あー、無理だったの。ごめんね。魔界じゃないと飛べないみたいで」
「そうか、すまん」
「ぜんぜん」
「「……………」」
気まずい
正直話せるほどコミュ力ないし、それになんかキスのことで頭がいっぱいになってそれどころじゃない。
「つ、翼ってしまえるのか」
「うん、しまえるよ。しまおうか?」
あ、回答に困ること言ってしまった。正直どっちでもいいんだけど……よしここは
「………?ユウト?」
「………zzz」
寝たふり!
をしたつもりがそのまま眠ってしまった。
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