第7話

「………何があったんだ?」


目が覚めると、木々はなぎ倒され、岩は破壊されて、地面は凸凹になっていた。しかし、俺の周りだけきれいなままだった。


「あ、起きた?どうだった?私のひざまくら」

「さ、最高だったけど……これは?」


荒れ地の方を見て言う。


「あー、なんかちょっとした魔物が襲ってきただけだよ」

「どこも、ちょっと要素が見当たらないんだが……」


どこもかしこも荒れ地になっている。よく俺生きてたな。


「あー!やっと起きたのね!?」


どこにいってたのやら、ボロボロの格好をしたアリエルが戻ってきた。


「どうしたんだ?そんなボロボロで」

「どうしたもこうしたもないでしょ!オーガが襲ってきたのよ!」


アリエルは腰にてをあてて、俺の方に指を指しながら言ってきた。


「オーガ?......そっか」


なんか聞くのもめんどくさくなったので、もう一度イリーナの膝に頭をのせる。


「いや、興味持ちなさいよ!」

「........めんどう」

「はあ、なんか怒る気もうせたわ」

「そうそう、お肌に悪いからなぁ。にしても、加護ならもうちょい余裕で倒してくれよー。こんな荒れ地は怖い」


なんかリアルに「ブチッ!」と血管が切れたような音が聞こえた。


「それはあんたのせいでしょ!」

「………ごめん、なに言ってるかさっぱりわからん」


俺のせい?寝てたんだぞ、俺は。 


「じゃあなんで『契約』がきれてるのよ!」

「あ、それ私も思ったー」


………『契約』?知らんわそんなもん。


「そのせいで魔界の時の力が使えないのよ!そりゃああんな弱かったらオーガにもてこずるわよ!しかもこいつは手伝わないし!」

「………zzz」

「寝るなぁ!!」


いや、だってなに言ってるかわけわからんからなぁ


「で、なんで『契約』きったの!?」

「…………ふっ」


俺は起き上がって、自分髪を捲し上げる。


「『契約』ってなんのだ?」

「「えっ?」」


しばしの間、沈黙が流れた。









「いい?『契約』っていうのは、私達があなたの加護だという縛り。つまり、私達が加護であるかぎり私達は全力であなたを守る義務があるの。でも、その『契約』がきれた。つまり私達は自由なったのよ」

「へぇー、良かったな」

「良くないわよ!」


なんで?その『契約』がなくなって、自由になれて万々歳じゃないのか?


「私達のいた世界は天界と魔界。この世界はその天界と魔界とリンクしているだけであって、世界は別々なの。現に天界や魔界ではスキルなんてないからね。だけど、魔法関連はあって、それは天使の上位だと星5あるいは星6匹敵するの。だから、こういった加護があるの。まあ、ほとんどは下位の精霊なんだけれどね」

「それでなにが問題なんだ?」

「『契約』が破棄された場合、私達のような存在はこの世界の人認定させられるの」


「???」


「つまり、あっちの世界で使えた魔法は使えなくなって.......ステータスが初期に戻るのよ!!」


アリエルは膝から崩れ落ちた。


「今まで努力してきたのに、頑張って来たのに、なんで、なんでこんな目に遭うのよ!!」


俺は立ち上がって肩をぽんとする。


そしてニカッと笑う。


「なに笑ってるのよ!さいってぇ!」


アリエルは目を真っ赤にしながら怒ってくる。くそっ、やっぱり俺のイケメンフェイスの肩ぽん+スマイルでも無理なのか……ん?


後ろから凄い殺気が溢れてくる。


そちらに覗くとイリーナが物凄い形相でこちらを睨んでいた。………!もしかして


「イリーナも弱くなって俺を怒ってるのか?」

「え?あ、いや、お、怒ってないよ、全然」


挙動不振になりながら首を横に振る。良かった。あれ?じゃあなんで睨んでたんだ?


「じゃあなんでーー

「避けて!!!」


俺は反射的にしゃがんだ。


刹那、俺の頭に何かがかすめた。


「なんだ?」


飛んできた方向を見ると馬面で筋肉ムキムキの魔物がいた。ミノタウロスってところか?


「.......なんでオーガが襲ってきたのに次の魔物がくるんだよ」

「知らないわよ!だいたいー


ごぉぉぉあー!!


後ろからもの凄い雄叫びが上がる。


後ろに瞬時に振り返る。


「うそーん」


これまた筋肉ムキムキで頭には角が二本生えている。なんか感覚的に分かる。こいつ絶対オークだ。









「おい、なんでオークがいるんだ?」

「は?誰も倒したとか言ってないんですけど?逃げたに決まってるでしょ」


いや、倒しといてくれよ。無理だよこの二体と戦うとか。


「魔物同士で戦わせるってのはどうかな?」

「よし、それで」


俺はそう言った瞬間に走り出した。二人も後ろからついてくる。その後ろにオークとミノタウロスが追いかけてくる。


「おい、あいつら戦わねーぞ!?」

「こまったね」

「どうするの!?このままだと追いつかれるわよ!というか前に川があるんだけど!?」


前方に俺が流されていた川とは別の大きな川があった。もう、賭けるしかない


「仕方ない、川を泳ぐぞ!」


そういって俺は川に飛び込む。続いてイリーナが、最後にアリエルが飛び込んだ。


ちらっと後ろを見るが、魔物達は追ってきていないっぽい。良かったぁ、賭けは成功だ。


「ユウト!前が!」

「ん?」


イリーナに指摘され前を見る。あれ?続きがないぞ?


これはもしや......


「滝だあぁぁぁっっ!!!!」


俺達三人は仲良く滝壺に落ちていった
















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