第3話

「やっとついた~~」


俺は洞窟に着くなり、座り込んだ。


「おお~、誰かと思えば、優斗じゃねぇか。」

「……誰だっけ?」

「おい、またそれかよ。本当は知ってるだろ?」


本当はしっている。クラスメイトの……うんうん、知ってる知ってる。


「いやー、佐藤くん。君にはいつもお世話になってるからね」

「佐藤じゃねーし!田中だし」


惜しいな。普遍的な名字だったな。


「あ、優斗くん」

「お、若林。お前生きてたんだな」

「はははー、生きてるよ」


若林尊。俺の友達。背が低くて、美形でよく女の子に間違われる。まあ、俺が妹の服を借りて(無断で)女装させたりしてるからなんだけど。



「てか、なんで陰の薄い若林を知ってて俺をしらないんだ!」

「覚えてるって………中島くん」

「絶対わざとだろ!」


ぎゃあぎゃあわめく、中島くん。あれ?中岡くんだっけ?


「若林はどんなスキルだったんだ?」

「えっと、僕はね『鑑定』だよ」

「『鑑定』宝石が嘘か見破るやつか?」

「ちが~う!!」


なんか急にメガネの山田がでてきた。


「解説しよう。鑑定とは、魔物の弱点や、習性、能力が分かる能力だ!」


なんか勝手に解説してるし。こいつは確かオタクだったよな。


「ふーん、でお前のスキルは?」

「ふっ、『Cテイマー』っさ」


まさかのキャラかぶりー。


「優斗、」


誰かと思って振り返ると、そこにいたのは


「おう、日菜か」


雪乃日菜、世界的ブランドYUKINOのご令嬢。父親がYUKINOの社員で、小学校のときパーティーに参加した時にたまたま会って、高校で再開したって感じだ。


日菜は長くて綺麗な茶髪で、美人ランキングでは堂々の第一位だ。


本当は付き合って、ヒモになりたかった。なりたかったけど、ドクターストップならぬファザーストップがかかってしまった。父さんのことを考えてくれって言われてしまった。


「スキルはどうだったんだ?」

「『吸血鬼ヴァンパイア』だよ」

「ヴァンパイア?」

「そう、相手のスキルを一時的にコピーしたり、傷が早く治ったりするの」

「めっちゃ便利ー」


てことでー、と続けて日菜は俺に近づいてきた。


そして、見つめてくる。


「え?」


顔を近づけてくる。なに?き、キス?


日菜の唇の艶やかさが、色っぽく映る。


日菜の顔はそのまま俺に近づいて、周りから、ひゃーだの、きゃー、だの聞こえてくる。恥ずかしい。


日菜の顔は俺の顔にゆっくりと近づいて、急に顔を落とした。


カプッ


「は?」


日菜は俺の首筋に口を付けた。というか、なんか噛まれてる?全然いたくないけど。


チュー


「え?あ、え?」


ぬぱッ♥


少しの間、吸ってから色っぽく、口を離す。


「…ふふ、美味しい」

「あ、え、あと、え?」


俺は戸惑う。


「え?なにこのスキル。『働き者』?どんな能力か分からないけど優斗にあわないスキルじゃない?」

「え?スキルコピーしてたの?あー、それで。因みに俺のスキルは働くと強くなって、休むとリセットというものだぞ」

「……使えないね」

「それな」


麗奈はふふっと笑う。俺も笑うが、何故か緊張して上手く笑えなかった。


話し合えると、日菜は俺の隣を通ろうとして「キスしてほしかった?」と俺にだけ聞こえる声でささやいた。


カァっと顔が熱くなるのが分かった。


「何デレデレしてるの?」

「え?あ、いや」


綾音がじーっとジト目で見てくる。なんで、そんな目で見てくるんだよ。


「なんでー」

「知らない」


綾音はプイッと顔を反らして、どこかへいってしまった。


なんだったんだ?







「サボるなぁ!!!優斗ぉ!!」

「俺のスキルは『サボり魔』だから仕方ないだろ?」

「嘘付け!『働き者』だろ!働けよ!」


源内がぎゃあぎゃあ怒鳴り散らす。源内はクラス委員の奴だ。いつも、俺に怒ってくる。


現在、クラス全員(俺以外)は家造りをしている。洞窟は暗くて、なんかいやーとか言ってたら、他の連中も賛成してくれて家を造ることになった。


この世界の住民に会うかかどうかは危険なのでまだやめとこうということになった。


「てかさぁ!なんだよその布団!枕!どっから出したんだよ!!」


そうだ!俺は今快適なお布団で睡眠しようとしていたところだったのだ。それなのにこいつは邪魔ばかりしやがって。


「どこって、湯坂に作ってもらったんだよ。あいつのスキル『蜘蛛の糸』だからよ」

「人に働かせてるんだったらお前も働けよ!」


俺はムクリと起き上がる。


「…なんだよ」

「登坂のやつはスキル『怪力』、村井のやつはスキル『設計』、山桃のやつはスキル『斬』」

「……それが、なんだよ」


俺はキリッとした顔で言う。


「言ってみただけ」

「なんだよそれ!」


源内が俺の胸ぐらを掴んで揺さぶる。


「正直、俺にできることないだろ?レベルも、他の奴らはレベル5もいってるのに俺は未だ1。あいつらは木を切り倒すのに1分。俺は1時間。分かるか?」

「それは....そうだが」

「だろ?じゃあお休み」


俺は布団をかぶって横になる。なんか、起きろーとか遠くの方で聞こえたがそのまま俺はいびきをかいて寝た。















「ーーーーーろ」


「ーーーーつってんだろ」


「おきろ!!!」


「........あと五分」

「待てるかよ!」


あれ?空飛んでる?


そう思った瞬間、背中に衝撃が走った。


「いてっ」


俺は背中をさすりながら起き上がる。目の前にはクラスメイトの半数近くがいた。


「なにすんだよ~人がせっかく気持ちよく寝てたのによ~」

「あぁん!?」


クラスのヤンキー田代が俺の顔面に唾を飛ばしながら威嚇してくる。汚な。俺は田代をにらむ。


「なんだその目は?あ!?」

「ぐふっ!」


腹を思いっきり蹴られた。


「ほんと、うぜぇ」


その後何度も蹴りを食らう。周りの奴らも俺のことを見て笑っている。


あ、不味い。意識飛ぶ..


「そこまでだよ、田代君」

「あ!?何だよ!朔哉!」


朔哉、桐谷朔哉。心優しきイケメン(俺の次に)。俺の友達。取り敢えず助かっ..


ドンっ!


「ぐはっ!」


「僕にもやらせてよ」


どす黒い笑みを浮かべる。


「.....はぁ、...なんでだよ..朔哉」

「さあねぇ?」


朔哉は答えをはぐらかして俺を蹴る。


「じゃ、捨てよっか。そこの谷に」


突然蹴るのを辞めると朔哉は言った。捨てる?谷に?


俺は見ていた連中に担がれる。力が入らなくて抵抗できない。結構やばいぞ


「じゃあ、バイバイ。お前のこと大っ嫌いだったから」

「...へっ、そうかよ」


最大限のみえを張る。だからといって抵抗できる訳でもなく、俺は谷に落とされた。

















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