44話義妹と義兄の変わりゆく関係?
ディナータイムを終えて、家に帰ると……。
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
「おう、ただいま」
「お腹空いてるよね?」
「ああ、そうだな」
「すぐに食べる? それともお風呂にする? ……あぅぅ……」
「あん?」
なんだか、いつもと様子が違う。
モジモジしてるし、心なしか顔が赤い気がする。
「わ、わ、わた……舞衣ちゃん、言えないよぉ〜!」
そう言うと、リビングへ引き返していった。
……一体、なんだったんだ?
……まさか、新婚夫婦ごっこか?
ひとまず、ご飯を食べながら話を聞く
「へぇ、良かったな」
「うん!」
どうやら、舞衣って子とライン交換をしたらしい。
クラスのグループラインには入らなかったが、特に何も言われなかったみたいだし。
「お昼ご飯とか一緒に食べるのか?」
「うん、良かったよー。一人で食べるの辛いもん。ただね、舞衣ちゃん美人さんでしょ?」
「うん? まあ、美人かもな」
ロングの黒髪に、均整のとれたスタイルをしてた気がする。
顔も可愛いというよりは、キレイ系だったかもな。
「むぅ……お兄ちゃんは、舞衣ちゃんみたいのがタイプなの?」
「あん? 何故そうなる? 今のは一般論だ」
「そ、そうなんだ……」
「で、それがどうかしたのか?」
「う、うん……だから、男の子たちがいっぱい集まって来ちゃって……でも、すごいんだよ? 舞衣ちゃんがひと睨みしたら、みんなどっかに行っちゃった」
「へぇ、まあガキンチョには怖いかもな。大人っぽい女の子は、あの年頃には難しいよな」
「カッコいいよね……わたしも、あんな風になれるかな? 早く、大人になりたい」
「クク……」
「ふえっ? ど、どうして笑うの?」
「すまんすまん……俺も似たようなことを思ってたよ。早く大人になって、兄貴たちを安心させてあげたいってな」
「お兄ちゃん……」
「春香、そんなに急がなくて良い。お前は自分のペースで行けばいい。兄貴たちも、そう願っているはずだ」
今なら、兄貴たちの気持ちがわかる。
俺も、散々に言われてきたから。
「で、でも……それじゃ間に合わないよ……」
「うん? 何にだ?」
「う、ううん! よーし! 頑張らなきゃ!」
「あん?」
「お、おやすみ!」
「お、おう」
そう言い、自分の部屋へと入った。
うーむ……やはり、そういうことなのか……。
しかし、そうだった場合……俺は、どうすれば良い?
◇◇◇◇◇
うぅー……上手く出来なかったよぉ〜。
布団に入って、今日の出来事を思い出します……。
あれは、お昼休みの時間でした……。
教室だと目立つからって、校庭内のベンチで食べてたんだよね。
「ねえ、お兄さんのこと好きなの?」
「ふえっ!?」
な、なんでわかるの!?
まだ、一回しか見てないのに!
「なるほど……禁断の恋ってやつね」
「あっ——ち、違くて!」
そっか、知らない人から見たらそうなっちゃうんだ……。
「何かありそうね? 私でよければ話を聞くわよ? ……面白そうだし」
「舞衣ちゃん?」
「コホン……さあ、どうぞ」
……ど、どうしよう?
でも、このままじゃ変に思われちゃうし……。
舞衣ちゃんは、大人っぽいから色々教えてくれそうだし……。
頼ってみようかな? ……誰かに聞いて欲しかったし。
「あ、あのね……」
実の兄弟じゃないこと、お父さんの従兄弟だと伝える。
あとは飲食店を経営してることと、その二階で妹と一緒に暮らしていること。
お兄ちゃんの、不幸な事故のことは話さないように。
「なるほど、だからお兄ちゃんってことね。確かに、おじさんには見えないものね。いくつなの?」
「えっと、二十六歳だったかな」
「約十歳差ね……彼女はいるの?」
「た、多分、いないよ。仕事してるし、休みの日もわたしたちの相手をしてくれてるし」
「へぇ、モテそうなのにね。まあ、あまり興味がないタイプなのかも」
「そ、そうなの?」
「ええ、何となくわかるわ。自分で言うのも何だけど、私はモテるから」
舞衣ちゃんが言うと嫌味に聞こえない。
だって、スタイルも良いし綺麗だもん。
「すごいなぁ……」
「いや、貴女も負けてないわよ? 教室でも、男子たちから見られてるじゃない」
「ふえっ!? そ、そんなことないよ! あれは、舞衣ちゃんが綺麗だから……」
「たまにいるのよね、こういう子が。天然モノね……ふふ、面白いわ」
「え、えっと……」
何が面白いんだろ?
舞衣ちゃんの方が面白いと思うけど……。
「話がずれたわね。私は年上の人にもナンパされたりするからわかるんだけど……そういう視線を感じなかったから。もちろん、お兄さんが分別のある大人って意味でもあると思う」
「う、うん。確かに一緒に働いてる人も言ってたよ。大学生の人と、色気たっぷりのお姉さんがいるんだけど……そういう視線を向けないって。そ、その……無意識的なものはあるらしいけど」
「それは仕方ないわよ、お兄さんだって男の人だもの。なるほど……そうなるとガードも固そうね。どんどん攻めていかないと気付いてもらえないわね。もしくは、気付いても尻込みされるわ」
「ど、どうすればいいかな?」
「お色気系は……やめた方が良さそうね。貴女には向いてないし、お兄さんも戸惑うでしょうし」
「あぅぅ……やっぱり、色気ないかなぁ」
「いや、そんなことないわよ。えいっ!」
「ひゃっ!?」
「ふむ、マシュマロタイプのお胸でCはあるわね。はっきりいって、同年代の男子からしたら凶器よ」
「うぅー……」
「わ、悪かったわ……これはこれでアリね」
「もう!」
舞衣ちゃんは少し変わった子みたい。
「何というか、段階を踏んだ方が良さそうね。少しずつ、意識させる方向かしら? あと、その年頃の男の人なら、お色気よりも家庭的な面を見せてあげた方がいいかも」
「家庭的……ご飯は作ってるんだけど……」
「ただいまの時に、お疲れ様とか、ご飯は?とか、お風呂は?とか、今日は何があったの?とか聞くといいかも」
「お疲れ様とかは言ってるけど……」
「つまり、お嫁さんにしたら良いなと思わせれば良いのよ」
「な、なるほど……どうして、そんなにわかるの?」
「大したことじゃないわよ。年上の彼氏がいることと、私にも兄さんがいるから」
「……大人だぁ」
「ふふ、頼ってくれて良いわよ?」
「う、うん!」
「定番だけど、ご飯? お風呂? わたしにする?とか言ってみたら?」
「が、頑張ります……!」
……結局、言えなかったけどね。
でもでも、こういうのを積み重ねていったら良いのかな?
そしたら、お兄ちゃん気付いてくれるかな?
……気付いても、無視されたら……ダメダメ!
もやもやしたまま、わたしは眠りにつくのでした……。
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