27話春香の新しい日常~春香視点~

 お兄ちゃんの家に来てから、あっという間に1週間が過ぎました。


 詩織やお兄ちゃんとの生活も少し慣れ……。


 お兄ちゃんの仕事場の人とも、少しだけお話ができるようになりました。


 よーし! もしかしたら人見知りが治ったのかも!


 この調子で高校でも頑張ろう!






 ……と、思ってたのに。


「でさー! あいつが……」


「マジで!?」


「そりゃウケるわ!」


 男の子達は相変わらず大きな声で怖いし……。


「それ知ってる〜私も聞いたことあるし」


「ほんと? 私もなんだ〜」


「これやばくない?」


「やばいね!可愛い! 今すぐ動画送ってー」


 女子達もすでにグループが出来てしまってます……。


 そんな中、私は教室の隅で一人で大人しく座ってます。


「はぁ……」


 わ、私だって好きでこうしてるわけじゃないもん。


「なんで、みんなすぐに話せるんだろ……」


 クラス分けの掲示板を見て、とりあえず教室に行って……。

 その時は、まだそんなに話して無くて……。

 入学式があるので、体育館前集合の放送があって……。


「そっから戻ってきたら……うぅー」


 どうして、こうなったんだろう?

 確か、体育館に行くときにみんなが会話しだして……。

 どこだっけ?とか、俺知ってる!みたいな感じで……。

 そのまま移動しながら話してて……。

 体育館の前で整列中には、もう打ち解けた感じで……。

 椅子に座ってからも、ヒソヒソと話してたり……。


「はぁ……」


 だって、パンフレットに書いてあったもん。

 教室に入ったら、放送が始まるまで静かにしてなさいって。

 入学式も、隣の人と喋らないようにって。

 なのに、みんな席を立ってるし、ずっと話してるし……。


「ふぅ……」


 完全に出遅れたわたしは、一人でいるのが平気なフリをして窓際の席から空を眺めます。


 ……お兄ちゃん、早速失敗しちゃったよぉ〜!


 やっぱり、全然治ってないや……お兄ちゃんの周りの人が気を使ってくれたんだ。


 わたしって、やっぱり子供なんだなぁ。


 周りの女の子も大人っぽくて可愛い子ばっかりだし……男の子は相変わらずだけど。


 これじゃ、お兄ちゃんに女の人として見てもらうなんて——夢のまた夢だね。


「それにしても……お兄ちゃんったら……」


 あ、朝からいきなりあんなことするんだもん。

 すんごく、びっくりしちゃった。

 お、お尻とか触られちゃったし……あぅぅ……。


そ、それなのに、何処か触ったなんて聞くなんて……。

お、 お兄ちゃんのばかぁぁ——! そんなの言えるわけないもん!



「ねえ、あの子可愛くない?」


「うんうん、声かける?」


「でも、なんか悪いよね……」


「あの子可愛くね?」


「お、お前行けよ」


「い、いや、なんか一人が好きそうだし……」


 ……あれ? 今、なんか聞こえたような。


 もしかして、わたしに話しかけてる?


 振り返ってみるけど……どうやら、気のせいみたい。


 はぁ……お兄ちゃんに良い報告がしたかったのになぁ。





 結局、誰とも話すことないまま、帰りの電車に乗ります。


 あのあとすぐに担任と副担任の先生がきて、明日以降の予定を伝えられた。


 そしたら、すぐに終わっちゃって……。


 みんなは教室に残ったり、何処かでお昼ご飯を食べるとか言ってたけど……。


「はぁ……」


 気まずくなったわたしは、すぐに教室を出てしまった。


「どうしよう……」


 このまま帰ったら、お兄ちゃんに心配かけちゃうかな?


「一応、昨日お小遣いはもらったけど……帰りに友達とかと行く時用に」


 でも、お兄ちゃんだって稼ぎが減ってるのに……。

 でもでも、心配かけちゃう方が大変かな?


「はぁ……」


 わたし、一日に何回ため息つくんだろ?

 でも、家のこともちっとも上手く出来ないし……。

 詩織の送り迎えだって、お兄ちゃんにしてもらったのに……。


「わたしって何にも役に立ってない……」






 とりあえず、駅前のマクドナル○で食べることにしました。


 お兄ちゃんが心配するし、もう高校生だから一人で食べても平気だもん。


「いらっしゃいませー、ご注文はいかがしますか?」


「え、えっと……これのセットをください」


「はい、かしこまりました。では、この番号札を持って席にてお待ちください」


「は、はい」


 うぅー……ただの注文ですら緊張しちゃうよぉ〜。




 その後、窓際の席で外を眺めながら食事をする。


「美味しいけど……」


 やっぱり、みんなで食べた方が楽しいよね。

 周りの席には制服姿の高校生たちが、楽しそうに食べている。

 わたしは元々友達が少ない上に、仲のいい子達は別の高校に行っちゃったし。


「こんなんで上手くやれるのかなぁ……」


 お母さんはあんなに社交的なのに、どうしてわたしはこうなんだろ?

 中学に上がる頃から、人と話すのが苦手になっちゃった。

 人の顔色が気になってしまい、いつも言葉が遅れてしまう。


「それのせいなのか、いじめ……避けられちゃったし」


 なんか男の子にはジロジロ見られるようになるし……。

 一部の女の子からは遠巻きにされたり……。


「いらっしゃいませー!」


「お客様、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」


「また、お越しくださいませ」


 ……カッコいいなぁ。


 あんなにハキハキとして、相手の目を見て仕事してる。


 わたしと変わらない年齢なのに……。


「……そっか、バイトをすれば良いのかな?」


 もう高校生だし、それをすれば少しは良くなるかな?


 よ、よーし、今のうちに調べちゃお!


 食べ終わったわたしは、家に帰るまでスマホと睨めっこするのでした。



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