第12話 超回復




「いいですか?超回復を起こすには自分の体を知ることから始まります。骨がどのようになっているのか、筋肉はどうなって、どのように付いているのか、それらを知らなければなりません。今魔力を覆っている状態はそれを知覚するための手段でもあります」


 その言葉に従い魔力を全身へと行き渡らせる。


「今坊ちゃんは魔力で体を覆っている状態です。その魔力を全身を流すそうにしてみて下さい」


 魔力を流す、魔力を操作する。それに必要なのは先程のようなイメージ。そので俺は川の水が流れるのをイメージしてみる。その水を自分の魔力に置き換える。


「くッ!」


 しかし俺の魔力は少し揺らいだだけで流れることはなく、体をおおっていた魔力も霧散してしまった。


「どうですか?想像以上の難しさでしょう。そう簡単には魔力操作は行えません」


「……」


 気が遠くなるほどの難しさ。それが初めて魔力操作に触れた感想だった。


「ここで、坊ちゃんに裏技を使いましょう」


「裏技?」


「はい、坊ちゃんの魔力に私が干渉し魔力操作を行います」


「ッ!そんなことができるの?」


「ええ、できますよ。もちろん自分の魔力を操作するほどは出来ませんが。それに私が坊ちゃんの魔力を操作すれば坊ちゃんも魔力が流れる感覚を掴むことができるかもしれません」


 自分の魔力を操作するだけでもとてつもないほど難しいのに、他人の魔力を操作するなんて一体どれほどの難度なのか、想像しただけで気が遠くなる。


 それをフリックは出来るという。フリックは俺の想像以上の強者なのかもしれない。


「どうしますか坊ちゃん、やりますか?」


「やる!やってくれ!」


 俺はその提案に飛びついた。それ以外に選択肢など無い。


「わかりました、ではこちらに背中を向けてください」


 背を向けた俺の方にフリックは両手を置く。


「そのまま魔力で体を覆ってみてください」


 先程同様魔力で全身を覆う。


「では行きますよ」


 その声とともにフリックが俺の魔力を操作する。


「グガッ!」


 強烈な痛みが全身を襲い、俺はそのまま倒れた。


「どうですか?それが魔力操作と全身の超回復です。今坊ちゃんが体験したその痛みは回復痛と言って体が作り変わることに伴う痛みです」


「ハァ…ハァ…ハァ…」


 まるで内側から食い破られるような痛みだった。


 俺は倒れ込んだまましばらく動く事が出来なかった。


「少しは落ち着いましたか?」


 そうして呼吸が整ったところでフリックが声をかけてきた。これに何とか答え立ち上がる。


 するとさっきまで全身筋肉痛で動かすのもやっとだったのにその痛みが無くなっていた。それに加えて体が動かしやすくなった気がする。


「それが坊ちゃんの体が作り変わった証拠です。初めのうちは私が坊ちゃんの魔力を操作して超回復を引き起こしますが、自分で魔力操作を行った方が超回復と肉体の変化は効率が良くなります」


「わかった、絶対に俺は魔力操作を習得する」


「その意気です坊ちゃん。では坊ちゃんの筋肉痛も治ったことなので昨日同様鬼ごっこを始めますよ。今日は昨日よりもハードになります。気を引き締めていきましょう」


「望むところだ!」


 そして俺はフリックに追いかけ回された。しかし昨日よりも速く、素早く走り回ることができた。これが超回復の影響だという実感を得ると共にまた俺は筋肉痛になった。


 そしてまたフリックに魔力操作で超回復を起こしてもらい、走り回ることを一日中行った。


 その日の夜、俺は気絶するように眠りについた。





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