第11話 魔力操作
翌朝、俺の体は昨日の鬼ごっこの影響で筋肉痛に襲われていた。
それはそうだ。今まで経験したことがないほどに走り回ったのだから。今日もあれをやることを思うと逃げ出したくなってくるが、その気持ちをグッと抑える。全ては将来生き残るためだ。
昨日と同じように動きやすい服装でフリックと中庭で稽古が始まる。
「今日も昨日みたいに…鬼ごっこやるの?」
俺は少し躊躇いがちにそう言うとフリックは首を振った。
「いえ、鬼ごっこもやるのですがその前にひとつ坊ちゃんにやってもらいたいことがあります」
「何?」
「魔力操作です」
「魔力操作?」
「そうです」
魔力操作、それが一体鬼ごっことどう繋がるのだろうか。
「ここで一つ坊ちゃんにお聞きしますが体の調子はどうですか?筋肉痛になっていませんか?」
素直に俺は頷く。体のあちこちが痛くて動かしづらい。
「それは良かった。それが魔力操作に繋がるのです」
「なんで?」
「魔力を全身にまとい、それを体内を流すように操作する。そうすることで筋肉は超回復し、より強くより動かしやすくなります」
フリックは魔力を身にまとい、俺にも見えるようにゆっくりと流れるように操作し始めた。
「ここで重要なのがこの超回復なのです。幼い頃より魔力操作による超回復を行うことで骨格や筋肉、身体そのものが運動、そして武術をすることに最適化されて行くのです」
凄い、魔力操作にそんなことができたのか。そんなこと全然知らなかった。
「フリックもやっていたの?」
「ええ、私もやっていましたよ。私も師のような存在が居ましてね、その人に教えてもらいました。昔の私は強くなるために必死でしたから」
その言葉にフリックは昔を懐かしむような顔を浮かべた。
「では坊ちゃん、坊ちゃんも強くなりたいのでしょう?早速魔力操作を始めますよ」
「わかった」
「まず初めに己がうちにある魔力へと意識を向けます。それを体全身を覆うようにやってみてください」
目を閉じ、深呼吸をする。
フリックの言葉に従い自分の中にある魔力へと意識を向ける。そうすると胸の奥に淡く揺らめいている力を感じた。これが魔力。
初めて触れたそれはとても暖かかった。
感じ取った魔力を全身へと行き渡らせるよう意識する。しかし魔力に変化はない。
「坊ちゃん、魔力を引き出すことが難しいなら水が湧き出すイメージをしてみて下さい」
その通りにイメージしてみる。地中から少しずつ少しづつ湧き上がる地下水のように、勢いよく飛び出る噴水のようにイメージする。
すると先程まで変化のなかった魔力が胸の奥から溢れてきて俺の体を覆った。
「これが…魔力」
「やりましたね坊ちゃん、しかしそれはまだ初歩、これよりその魔力を操作しなければなりません」
フリックは俺と同じようにもう一度全身を魔力で覆った。
「魔力を操作する。それは全身に魔力を流すことです。緩やかにそして速やかに魔力を流すことにより身体能力の向上の他魔法攻撃や物理攻撃の軽減などの効果が得られます」
「そして今から行うのが魔力操作による肉体の超回復です。これは魔力操作の中でも極めて難しいです」
「そうなのか」
「はい、ただ魔力を操作するだけでは超回復は起こりません。骨、筋肉、全身一つ一つの細胞を感じ取り、それら全てに魔力を流すことで超回復は起こります。これには極めて繊細な魔力操作の技術が必要となります。そのためこの魔力操作は難しいのです」
「そんなに難しいなら今日魔力に触れたばかりの俺には出来ない気がする」
それがフリックの説明を聞いた俺の感想だった。あまりにも難度が高い。
「はい私もそう思います」
フリックはあっさり俺の言葉を認めた。
「しかし坊ちゃん、坊ちゃんは強くなりたいのでしょう?ならばやらなければなりません。習得しなければなりません。強くなりたいのならば」
「ッ!!」
そうだ俺は強くならなければならない。生き残る為に、誰よりも。
「わかった、絶対にこの魔力操作を身につけてみせる!」
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