第8話 プレゼント
店内は意外と広く、壁を囲むようにして台が置かれその上に魔道具が並べられていた。
魔道具は台ごとにガラスケースで覆われこちらからは触れないようになっていた。盗難防止のためだろう。
「どうですか?色んな魔道具があるでしょう?」
フリックの言う通りそのには多くの魔道具がある。少し見ただけだも指輪やネックレス、ピアス型の物やマントやローブといった物まである。なんの効果があるのかは分からないが、沢山あることだけはわかる。
「キェーーーーーィイーーーィイーー!!」
「ッ!?」
俺がそんな品々を見て回っていると店の奥から奇妙な声が聞こえてきた。
「な、何だ?」
「あぁ、この声は店主のものですね。時々このような声が聞こえてくるのですよ」
フリックがさっき言っていた店主が変わっているというのは奇声を上げることなのだろうか?そう思うと確かに変わっている。普通はそんな声は出さないだろう。
「とりあえず店主を読んでみましょう」
そう言ってフリックは店の奥へ向け「すみませーん」と声をかける。すると今度は「カァーー!!」という声が聞こえて、そして一人の男の人が奥から姿を現した。
その男は背が高く袖のない服を着ていた。そしてボサボサの髪の毛を掻きながら歩いて出てきた。
「なんだなんだ?オレァの創作意欲をそごうとするやつは?」
男は不機嫌損に顔を
「こんにちはフェイ店主」
「おぉ!あんたァフリックさんかい、よう来たなぁ!」
フリックが声をかけると男は先程が嘘のように明るい表情になり歓迎するような雰囲気になった。
「今日はどうしたんだい?」
「今日は坊ちゃんへのプレゼントを買いに来なのですよ。そうしたら坊ちゃんが店主のお店が気になったらしいので」
「坊ちゃんぅん?」
男は身を乗り出して俺を覗き込んできた。
「おお、童がフリックさんが世話してるつぅ坊ちゃんかぁ。オレァこの店やってる【フェイ・ヴロウ】ってもんだ」
「クロロ・ルシウスです」
俺はこれはでと同じような態度で自分の名前を言う。そんな俺の態度など気にしないという様に「よろしくな!」と男─フェイはニカッと八重歯を見せて笑った。
それから軽く握手をしてフェイはフリックとまた向き合って話をし始める。
「それでぇクロロの坊主のプレゼントってのは?」
「ええ、今日は坊ちゃんの十歳の誕生日なのですよ。なので私からお祝いの品として何か差し上げたいと思いまして」
「カァー!そりゃーめでてぇ日じゃねーか!こりゃオレァも下手なもんを見せらんねーな!」
フェイはそう言ってまた店の奥へと姿を消した。しばらくして複数の魔道具を持って出てきた。そして一つ一つガラス台の上へと魔道具を並べ始めた。
「よし今ここに出した品がオレァが自信を持って出せる魔道具だ!クロロの坊主好きなもん選んでいいぞ!」
両手を広げ気前よくそう言い放つ。
俺の前に並べられた品々はどれも丁寧な作りをしているものばかりだった。
「これなんがどうだ?」
フェイは手に手袋の魔道具を持って見せる。
「この手袋は“マジックハンド”って魔道具でよ、この手袋をはめて魔力を込めれば、こんな風に手が伸びるんだぜ」
フェイは実際に手袋をはめると、その手がビョーンと長く伸びた。
面白そうな魔道具だった。手が伸びるならば自分が動かなくても遠くのものを取ることがができるたり、自身では届かないような高いところにあるものを取ったりできる。
便利な魔道具だが、それよりも俺は目に止まったものがあった。
「これは?」
俺の目に止まったそれはサングラスのような魔道具だった。黒いレンズに黒いフレームの正しくサングラスみたいだった。
「おお、これは“ヌーンナイト”って言う魔道具だ。それをかけると昼間は眩しい光をカットして周りが見えやすくなる。そして夜は暗闇をものともせず周りが見える。要するにそれをかけると昼も夜も関係なく同じくらい見えやすくなるんだぜ」
すごい、ただのサングラスとしての効果だけでなく、夜目が聞くようにもなるのだ。これがあればもし夜中に行動することになっても灯りを必要とせずにすむ。
俺はこの魔道具が欲しくなった。魔道具の効果を抜きにしてもこれが欲しい。
(これがあれば俺の目つきの悪さを隠すことができるかもしれない)
そう俺は目付きが悪いのだ。フリックは俺を見慣れていた。魔道具店店主であるフェイはそんな事気にしない人物なんだろう。
しかし散歩に出かけた時に串焼きを買った店の人は俺を見た時にギョッとした様子だった。
俺の目つきの悪さは年不相応なのだ。
だから目付きを隠せるこの魔道具が欲しくなった。
「これが欲しい」
「そうかァ!これにするのか!持ってけ持ってけ」
フェイからその魔道具を手渡される。
「良かったですね坊ちゃん、気に入ったものが見つかって」
そう言って俺はその魔道具、ヌーンナイトをフリックからプレゼントとして貰った。
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