第4話 昼食





 食堂は広く、長いテーブルが中央に置かれていた。脇には数人の使用人が控えており、静かに俺がテーブルに着くのを待っていた。


「さぁ坊ちゃんお座り下さい」


 フリックに上座の席へと案内されそこの椅子へ腰を下ろす。すると使用人の女性たちが厨房へと歩き出した。


 少しして俺の前には料理が置かれる。鮮やかな赤色が映えるトマトパスタ、淡い黄色い水面にパセリが少々ふりかけられたコーンスープ、新鮮な野菜を使ったサラダ。どれも食欲をそそる品だった。


「トマトパスタにコーンで作った冷製スープ、今朝取れた野菜で作ったグリーンサラダです。どれも坊ちゃんのリクエスト通りの好物ですよ」


 目の前の料理は俺の好物だった。転生したクロロはではなく、前世の俺が好きだったものだ。その事に少し驚いたが、空腹の前にはどうでもいいことだった。


「いただきます」


 そう言い俺はフォークを手に取りパスタをクルクルと巻き付け口に運んだ。


 美味い、口に運んですぐにその美味しさが伝わってきた。トマトの酸味と麺の甘みそれがバランスよく合わさっている。コーンスープは冷たくてもトウモロコシの甘みが伝わってきたり、サラダは野菜の瑞々しさを引き立てるようなドレッシングになっていたりパスタに劣らず全てが美味しい。


 俺はフォークやスプーンを手を止めることなく動かしあっという間に平らげてしまった。


「ご馳走様」


 食後に出された飲み物を飲み干して「ふう」と息を吐く。前世では一人暮らしが長かったため自分で食事を作ることが多かったが、余り料理が上手く無かった。そのため数年ぶりに味わう美味しい食事にとても満足した。


「どうでしたか?今日の食事は?」


 フリックのその問いに俺はとても美味しかったと言おうとしたが、なんだかそれを伝えるのが恥ずかしくなり「普通だった」と言うことしか出来なかった。


 しかしそれを聞いたフリックは優しく微笑み「 そうですか」と言う。その顔を見てまた俺は気恥ずかしくなり目を脇にそらした。


「坊ちゃんは相変わらず素直じゃないですね」


「うるさい」


 そんな言葉を吐いてもフリックの微笑みは変わらず、その瞳は優しいままだった。


「それより坊ちゃん食後はどうなさりますか?」


 俺は少し考えた後この屋敷のことや、街などを見てみたいと思った。時分が住むところは確認しなければならない。


「少し散歩がしたい」


「散歩ですか?お一人で行くのですか?」


「一人で大丈夫」


 もしかしたら道に迷ってしまうかもしれないが、一人の方が自由に動くことができる。もし迷ったら誰かに道を聞けばいいだろう。


「そうですか、ではお気おつけて行ってらっしゃいませ」


 フリックは食堂から玄関の扉の前まで着いてきて、そして優しく送り出してくれた。




「さてブレイブファンタジーの世界はどうなっているのか見てみようではないか」


 俺は少しの不安と期待を胸に街へと足を踏み出した。







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