悪なのか善なのか

第1話

私は誰からも求められていない。

そんな私だが、たった一度だけ"求められる"とはどういうことなのか、考えたことがある。

私がいることで安心できる？

私がいるだけで事態が解決できる？

私が来ただけで人々が笑顔になる？

全てにおいて、そこに私の本心は無く私が私のために動けば、他人から求められることがなくなってしまうのだ。

私は私の気持ちにまっすぐに生きている。だから私は人から求められぬ悪人である。

では、私は善人にはもうなれないのだろうか？

いやちがう。私はまだ善人にもなれる。私の立ち振る舞いを、称賛してくれる人々がいるからだ。その人々の前に立った時だけ、私は善人である。

悪と善など、表裏一体なのだ。片方では悪だが、もう片方では善である。

では、偽善とはなんなのだ？

他人を偽る行為は紛れもなく悪である。だが、偽善としての行動自体は善なのだ。

善なのか悪なのか。

私は考え、行動する。私が人々の善であるために。