夢と魔力とあの時のこと
「あの日みたいな夢でした。私がさらわれかけて、ルナさんが助けてくれた時みたいな...。あいつらに囲まれて、楽しかったこととか吸い取られそうになるところで目が覚めたんです。」
「一度、取り逃してるからかもしれないね。夢を取りそびれた人さらい《魔獣》は、同じ相手をターゲットにしやすいって話があるんだ。」
「そう、ですか...。」
私が今でも思い出してしまう、あいつらにさらわれかけた日のこと。
✱✱✱
その日は梅雨の真っ最中で少しだけ雨が降っていた。私はその日、町の行事の準備をしにあの丘へ出かけていた。
『よし、肝試しのゴール地点の準備終わりーっと。降りるか。』
私が準備を終える頃には雨は上がって夕日が見え始めていた。ここから見える夕日は本当に綺麗だから、映画やドラマのロケ地なんかにも使われたことがあるんだっけ。
そんなことを考えているうちにどんどん日は落ちていった。
『やばっ、もうあんなに日が落ちてる...。急がないと。』
丘を下る途中でもう完全に日が落ちて真っ暗になった。そんなに長居してわけではないはずなのに。
『何も出ませんように....。』
そう呟きながら、日が落ちて真っ暗になった坂道を下る。その時、少し強い風が吹き抜けていった。何も気にしなくてよかったのに、私は後ろをふり返ってしまった。ふり返った先には、黒いモヤモヤした何かが渦のようになって動いていた。黒いモヤモヤは私の気配に気づいたのか、ものすごいスピードでこちらへ近づいてきた。
『...!』
私は声を出すこともできず、あっという間に黒いモヤモヤに取り囲まれてしまった。
暗くて寒い、真っ暗闇に。
暗闇の中では、私が見た事のある景色や小さい頃の私が次々に映されていた。
あー...私もうダメなのか...。と、思う。あれはやっぱり、近づいてはいけないものだったとここで確信する。ここに映っているのは、きっと走馬灯。
とても寒いし、お腹も空いた。おまけに遠くの方が白く光って見える。あぁ、これはもう.....本当に...。私はゆっくりと目を閉じた。
その後のことはよく覚えていなくて、目が覚めたらルナさんが隣にいて少し自己紹介をされた。それから、私が襲われたのは
✱✱✱
「じゃあやっぱり、私も行かなきゃダメ....ですよね。」
「まぁそうした方がいいような気がするな〜。そっちの方が向こうも出てきやすいと思うし。」
「あいつらがいなくなったら、怖い夢を見てうなされる事も少なくなる.....?」
「そっか、さやかの魔力は....夢に影響されやすいんだったっけね..。うん、なると思う。少なくともしばらくの間は。」
「そっか.....。」
今回この
「私行きますっ!」
午前四時、もうすぐ日が昇る。
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