第120話 再会の時
「――ハァ、ハァ、か、勝った……。――うっ……」
アーネストはレイジに斬り
あとはエデンに意識をつなぎ止めるので限界であろう、彼にとどめを刺すだけ。しかし今までの激しい戦闘での精神的負担と、破壊のアビリティの反動が倒したことで気がゆるんだレイジに押し寄せてくる。もはや今すぐにでも倒れ込みたい気分であり、足がおぼつかない状態であった。
「マナ、今だぁ! いっけぇー!」
「これで最後ですぅ!」
すると後方でマナとゆきの奮闘する声が聞こえてくる。
次の瞬間、カノンがいる
「レイジ! あとはあの水晶をその剣で直接破壊してください! そうすれば制御権を完全に破壊できるはず!」
「ッ!? ――カノン……」
那由他の言葉に意識がはっきりし、レイジはフラフラな身体に
漆黒の炎をまとう刀をにぎる手に力を入れ、レイジはカノンのもとへとただひた走る。
そこへ。
「一体なにがどうなってるの!? えぇい、もう! とりあえずここから先には行かせない!」
水晶の真横にいたリネットが状況についてこれず、
しかしすぐ隣にいる森羅が伸ばした静止の手によって、リネットの動きは
「さぁ、レイジくん、受け取りなさい。これがあなたが求め続けていたモノの一つ。そしていづれすべての答えを得て、勝利の
森羅は心から
柊森羅という少女の万感の想いを込めて。
「リネット、
「え? ちょっと!?」
リネットは森羅に引っ張られ、そのまま後方へと下がっていった。
これでレイジとカノンの間に立ちふさがる障害がすべてなくなった。
あとはこの破壊のアビリティをもちいた刀で制御権を破壊し、彼女を解放するだけだ。
近づいて行くほど、彼女への様々な想いが反芻(はんすう)してきた。九年前の
そしてとうとうレイジは、カノンがいる水晶の目の前にたどり着く。
「わるい、待たせすぎた。そしてごめんな……。今のオレじゃあ、もうカノンの騎士になれそうにないや……」
レイジは罪悪感の想いを噛(か)みしめながら、刀を振りかぶる。
「――だけどせめてキミの力だけには……、ハァッ!」
破壊の
すると水晶は無数の
レイジは刀を投げ捨て、そんな彼女をお姫様だっこの
「――カノン……」
その大切な者の重みを感じとり、ようやく彼女のもとへたどり着けたと実感する。うれしさが込み上げ、思わず泣いてしまいそうであった。
「――うぅ……」
感動に打ち震えていると、カノンがそのきれいな瞳を見開いた。
どうやら制御権によるいざこざがなくなったため、現実からエデンに入れたみたいだ。
「――え……、――れ、レージ……、くん……、ど、どうしてここに……」
「カノン、ようやくキミのもとにたどり着けたよ……」
信じられないとものを見たと、目を見開きたずねてくるカノン。
そんな彼女に今できる精一杯の笑顔を向ける。
「――え……、え? これって夢……、だよね? だってレージくんが、私の目の前に現れるはずないんだから……。――あれ? でも私、今、普通にエデンに入ってきたところだよね。――ということは、まさか……」
状況が全くつかめず混乱しているようだ。まあ、無理もない。目を開けたらいきなり九年前に誓いを
レイジとしてはここで彼女の混乱を解くため、なにか口にするべきところ。しかしあまりの感動とうれしさに、なかなか言葉が出てこない。
「――えっと、だな、カノン……」
「――ハッ!? 今気付いたけど、私レージくんにお姫様だっこされてる!?」
「そういえば落下するのを助けようとして、こんな形になってたな。今下ろすから」
顔を真っ赤に
「――あ、ありがとう……、あの、ごめんね、少し状況を整理させてほしいなぁ……。――ま、まずレージくんがどうしてここにいるのかを……。――ううん、それも大事だけど今は……」
カノンは息を整え、モジモジしながら目をふせる。だがそれもつかの間、後方にいるアーネストや森羅たちに視線を向けた。
確かに今の状況からして、まずはこの場をどうにかするのが先決だろう。
カノンはきらびやかに
そして。
「これ以上の
カノンは剣を振りかざし、
こうして彼女の宣言により、この巫女の
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