第5話

 大西氏とはやや話がそれるように見受けられるかもしれないが、氏のルーツや目指すものを知る手がかりをつかむには、出身校である農開学園や、その創設者である黒川氏に注目し、深く知る必要がある。そこで筆者は、一旦本特集の本筋から離れるように見え得ることを承知の上で、同学園や黒川氏の理念のような、大西氏とは遠い要素から順を追って探ることにした。


 五月某日、筆者は小型機で高松飛行場、旧高松空港に降り立った。黒川氏とは予定通りに、旧空港ビルの喫茶店で落ち合うことができた。うどんコーヒーなるサヌキ独自の飲み物を飲みつつ、筆者はインタビューを始めた。


──本特集では、昨今注目を浴びている若き特別区長官、大西氏という人物がどのようにして形成されたか、これからどうなるかを追うことを目的としています。今回はその第一回目として、氏の出身校である農開学園殿にインタビューさせていただきました。ご快諾いただきありがとうございます。

 本日のインタビューでは、在学中の大西氏についてのお話をもちろん伺いたいのですが、それに先立って、貴校の教育方針や、創設者である黒川さん自身の理念についても詳しく伺いたいと思います。


「よろしくお願いします」


──まず貴校の教育方針ですが、少々珍しいスタイルですね。


「そう感じて当然でしょうね。地域社会が見守る中で子どもを正しい方向へ育てるのが、現在のサヌキの教育方針です。本学園の創立時に、その方針に齟齬のない理念として『朝顔のようであれ』を選びました。子どもは上へ上へと成長していきます。でもそこには、適切な土壌や水、日光が揃っていて、更に支柱がなければならない。それら必要な物は私たち大人が用意するから、その環境を存分に利用し、どんどん吸収して、あるべき方向へ伸びて行ってほしい。そういう意味を込めました。高校生向けにしてはちょっと子どもっぽいかもしれないですけどね」

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