第31話 30-女神の代行者と眷属神
巫女の姿の少女は、柔らかな微笑みを浮かべながら、皇女の環へ一礼する。
「デイト・ア・ボット様…なのですね…」
「環さんには、説明は不要でしょう。わたしもあなたから、ウズメさんと同じ力をそして、アマテウス様の加護を感じます。あなたもわたしから同様の力を感じていると思います。」
「はい、こんなことは初めてです。」
「環さん、最初にお伝えしておく事があります。あなたは、女神の代行者ウズメさんの後継者です。我々眷属と対等な立場です。その自覚を持っていただく必要があります。自覚を持つ事で本来の力を得ることになります。あなたはまだ、女神の眷属のひとりとしての自覚がたりません。人でありながら、神の力を有する、その責任を持つ必要があるのです。」
「女神の眷属…」
あざみがデイトに尋ねる。
「デイト様、環様の力は、まだ本来の力ではないと言うことですか?」
「無論です。まだまだ本来の力に達してはおりません。女神の代行者なのです。」
環は自分の両手を見つめながら、デイトが語る言葉を自分の中で反芻する。 デイトは一度葵を見てマノーリアと梔子を見て環に向き直る。
「しかし、この希な確率を引き寄せたのは、環さんなのか?神無月さんなのか?天文学的数値であるが故に、わたしが目覚められた訳ですね。女神の復活も出きるのかもしれません。」
デイトの言葉に環が疑問を顔に貼りつけ、デイトに先を促す。
「神無月さんがわたしと接触し加護を授ける事ができ、マルチパープルの如月さんがいて、加護を得られる素質を持つ文月さんがおり、そのお兄さんは鳳凰の加護を既に得ており、何よりも、環さんの女神の代行者としての今までの誰よりも適正である事です。過去に適正がある人がいましたが、誰か1人の力で世界を変えることなどできません。やっとあの大戦から時が動き出したということです。」
まだ、環はデイトの意味していることを理解できず、尋ねる。
「適正があると言うのはどのような事なのでしょうか?」
「あくまでも、今までの後継者はウズメさんの代行者に過ぎません。女神の代行者ではありません。しかし、環さんは、ウズメさんと同様の光の魔法の資質を持ち、賢者としての知性を持ち、民達を導く人間性も持ち合わせている。これだけの好条件を無駄にすることはできません。アマテウス様の復活と、邪神を完全にこの星から消滅させなければ、青星ブループラネットもいずれ滅亡は避けられないでしょう。環さん本来の力を得られるよう、お願いします。」
「はい…努力は致しますが…どうすれば良いか…」
環はデイトの言葉を受け入れるが、どうすれば良いのかわからない表情をする。自分の気概でどうなる話しでもない、デイトがそっと環に近づき、環の手を取る。
「大丈夫です。わたしも力をお貸し致します。共にこの星を守りましょう。」
環はデイトの目を見て強く頷く。ふたりの話しが一段落つくと、柴崎が環に話しかける。
「悪いんだけど皇女様、うちの製品が禁忌に触れてないか、確認してもらえないかな?」
マノーリアが自分の身につけたブレスレットを環に渡す。柴崎がブレスレットの説明をする。環がまじまじとブレスレットを見て柴崎を見る。
「素晴らしい、魔法具ですね。問題ないです。念のため、明日奉納します。」
デイトもコクりと頷く
「柴崎さんがこちらを作られたのですね。」
「俺と言うとニュアンスが変わるのかな?うちの会社で、いろんな社員が携わったから」
「このデバイスは、問題ありませんよ。神無月さんが如月さんの魔力を体内に取り込めたのも、このデバイスのおかげですから」
眷属神からの禁忌を犯していないと太鼓判をもらう。
「じゃあ、量産体制整えないとな!それと、皇女様うちの支社をロスビナスに作りたいんだけどかまわないか?」
「この国と連盟の法律を遵守していただければ、民間企業に何か課すことはありません。柴崎さんは、その辺問題ないと思いますが、軍事にも関わりますので、担当文官と調整いただければ、確実かと思います。」
「じゃあ、明日その文官と会う事にして、今日は良い物件ないか一回りするか、それじゃ、みなさん俺はこれでおいとましますわ!じゃあな!葵くん!」
柴崎は手を振って部屋を後にする。マノーリアが柴崎のイメージをさらに良くしたようだ。
「この時間から、物件探し…ですか…思っていた以上に、柴崎さんって勤勉なのね…」
葵はおそらく、物件とは夜の街の良いお店探しのことだろうと推測する。ここには女性ばかりなのであえて言う必要もないと思ったが、デイトが口を開く。
「柴崎さんは違う目的のようです。」
せっかく、印象の良くなった柴崎のイメージを葵は擁護しようとする。
「デイト様、直哉さんのプライベートだからね。神様が言うといろいろ厄介だからさ」
「確かに、個人情報の漏洩は信用問題になりますね。」
葵がデイトの素直さに安堵するが、マノーリアが葵の心中を察するように低いトーンで葵に尋ねる。
「何故、葵くんがホッとしているの?」
「いや、別に意図はないけどね、なんとなく…」
「ふーん」
環がキリの良さを見計らい皆に尋ねる。
「ひとまず後は夕食を取りながらにしませんか?」
「タマちゃん!待ってました!お願いがあるの!葵の料理を再現してほしいの!タマちゃんも食べたいでしょ!日本の料理!」
梔子が耳をピョンピョンさせ、しっぽをフリフリさせて環に懇願する。デイトも興味津々と援護射撃をする。
「それは、興味深いですね。姉妹星の料理を知るのは、女神の代行者として知見を深めることになるでしょうね。」
「デイト様食べたいだけじゃない?俺の知ってる料理なんて、庶民の家庭料理とか安い料理ばかりだよ」
「葵くん!それがいいのよ!高級な料理でなく毎日食べる食事の方が知りたいわ!」
「みなさんの期待も高いようなので、葵さんもよろしいですね」
「あっ、はい、みんなの口に合う保証はしないですけど…」
全員がキッチンへ移動しエプロンをつける。葵は異世界イベント発動と心の中で思う。美少女に囲まれ料理を作るイベント楽しいのか?環は公務の衣装を着替えて、ラフなニットに着替えている。胸元は相変わらず大きく開いていて、最強ウエポンは、未だに戦闘配備中だ。その隣に霊峰のはずのデイトが準備を手伝う。あえて環の横に、たたなくてもと葵は思うと、デイトと目が合う。
「神無月さん、今、とても失礼な事を考えていますね。わたしのアバターと環さんでは、年齢差があります。比較するなら、環さんとあざみさんや如月さんと比較してください。文月さんは、年齢が近い分、現実的にかわいそうなので…」
「こらこら!デイト様!何を言っているのでしょうか?」
梔子から地鳴りのような音が聞こえそうな殺気を感じる。
「あーおーい!何を考えていたぁ?」
「俺は何も考えていない!クーの事はホントにだって!」
環とあざみはクスクス笑い、マノーリアはまたかと肩をすくめる。こうして、美少女だらけの手料理イベントが始まった。
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