第30話 29-皇女への報告

 容姿は、ふわふわおっとりとしたかわいい聖女キャラの環の性格は、見た目と違い、合理的で端的に話をするタイプの少女だった。葵はむしろ好印象を得た、よく分からない精神論や神への信仰心で話をされるより、説得力がある。女神の代行者である皇女と聞いて、狂信的だったら嫌だなと思っていたがそうでもない、ただこの世界の神のひとりに、葵は加護を得た上に直接会っているので、そう考えると狂信的になる人もこの世界だとそこまでおかしくないのかなとも思う。前の世界だったらドン引きだろうが、この世界の神は、近くにいるし目に見える。環は皇女になる前は、学者と錬金術師になる為に学んでいたらしい。




「学者と錬金術師…この世界の人はみなさんいろいろ職業技能を持つんですね?マニーは治療師の技能でクーは、モンスターテイマーとレンジャーだっけ?」




 葵がマノーリアに尋ねる。マノーリアは、先程、環に言われた花嫁の言葉に夢、見る少女の顔をして呆けている。




「マニー!聞いてる?」


「えっ、あ、職業技能の話?」


「話は聞こえているのか?ある意味凄いな」




 環がマノーリアの代わりに葵の問に答える。




「いろいろな技能を習得することで、職業選択の幅も広がりますし、まったく別の職業についても、別の技能を持つことで、個性となりますからね。別技能を得ていて重宝されるなんて事もあるんですよ」


「クーの技能とかマニーのはイメージがつくんですが、環さんの学者と錬金術はどんな技能なんですか?」


「わたしは歴史学を専門としています。この世界の女神・眷属神信仰と転移されてくる日本人の関係性と謎を解くのがわたしの目標です。だから、葵さんと交流を持つのもわたしにとって必要な事なのです。皇女としてだけでなく、一、歴史学者としても、わたしの学者としての技能は古代文字の翻訳や古代魔法の詠唱翻訳とその魔法の能力解読ですね。特に忘れられた魔法が禁忌の物であれば、封印しなければなりませんから」




 葵は学者でもやはり魔法が必要な要素なんだなと思う




「錬金術の技能は復元や作成です。材料が揃えばある程度の物は、作成可能です。わたしの場合は、光の魔法資質を持っていますので、人の記憶からも作成可能です。蘇生や人造人間などは禁忌になります。この欲にとりつかれると、間違いなく悪魔に忍び込まれますね。アンデッドやスカルナイトの製造主として悪魔に利用されます。」




 葵は錬金術師は怪しい感じがしたが、この世界ではまっとうな仕事のようだ。マノーリアが補足する。




「環さんは代々学者の御家なの、環さんのお母様が錬金術師をされていて、環さんは両方の技能をお持ちなのよ」


「タマちゃんちの葉月家は世界的に有名なおうちだからね~」


「名字は葉月さんなんですね。」


「皇女になると姓を名乗らないのです。ウズメ様が姓を名乗らなかったので、各眷属神の神殿長もそれにならい姓を名乗りません。」


「だから、あざみさんも名前だけなんですね。みんなお嬢様なんですね。」




 この3人の家はどこもやはり良いところの家なんだなと葵思う、梔子はあまりお嬢様って感じがしないが、マノーリアと環は確かに箱入り娘な感じはする。梔子が葵の心中を察したのか抗議する。




「葵!今、失礼な事考えたよね?タマちゃんとマニーはお嬢様ぽいけど、あたしはお嬢様ぽくないって」




 梔子は心が読めるなかと葵は焦る。環がクスクスと笑いながら口を開く




「葵さん!クーちゃんも公の場であると全然変わるんですよ~ねぇクーちゃん」


「タマちゃん!言わなくて良いの!」


「それは見てみたい」


「使節団が戻り次第、祝賀会をする予定です。楽しみですね。使節団も帝国を出たと聞いているので、問題なければ、2日後には帰国すると思います。」


「先に俺たち帰国する為に別行動したのに2日しか変わらないんですね」


「まぁ~道中いろいろあったしね~」


「そうです。加護のお話をお聞かせ下さい。デイト・ア・ボット様にお会いになられたのですか?」




 環の問にマノーリアが答える。




「ええ、でも、お姿は伝説や歴史書にあるお姿でなく、少女のお姿でした。仮のお姿だそうです。本来のお姿は霊峰そのものなので、動けないそうです。今は霊峰神殿のあざみ神殿長と巫女のお姿で生活されています。今はビナスゲートの首都におられると思います。」




 葵が環を驚かせようと提案する。




「加護の力でデイト様呼びましょうか?」


「そんなことが出きるんですか?」


「葵くん、朝もデイト様から窮地の時にって言われていたわよね?」


「女神の代行者の皇女様を納得させるのに会わせないわけにいかないだろ?俺のこれからがかかってるから窮地だよ!」


「葵くん、物はいいよね!」


「なんだかんだ、デイト様優しいから大丈夫じゃない?」


「じゃあ環さん良いですか?」


「はい!」




 環はコクりと息を飲む。葵はリンクを唱える。部屋の風景が代わり、目の前に少女が現れ少しめんどうな感じで葵に尋ねる。




「神無月さん、窮地ではないですよね。」


「デイト様現皇女と直接あった方が良くないですか?すぐに来れるんだし、そっちの悪魔探しはけりが着きましたか?」


「こちらは既に片付いている。確かに皇女と会う必要もあるのは事実です。あざみさんどうしますか?」




 デイトの横にあざみが現れる。




「ご無沙汰しております。環様。デイト様が必要とあればお供します。」




 環は両手を口にあて驚いている。そこに向こう側から男性の声がする。




「デイトちゃんこれ凄くない!なんて魔法?これ製品化できたら、凄い売れるよ!あれ?葵くん達か!」


「直哉さん?!」




 デイトが不思議そうな顔しながら小首を傾げる。




「柴崎さんがここに入れたのが不思議ですが…おそらく、あなたも皇女の元へ連れていくことが必要と事でしょう、わたしの起動時のエラーは出ていませんから、神無月さんそちらに行くことにします。」


「わかりました。お待ちしてます。」




 環が驚いていたが我に返り葵に尋ねる。




「葵さん、ビナスゲートの首都から来られるのであれば、かなり時間を…」




 環が言い終わる前にデイトとあざみと柴崎が部屋に入ってきた。柴崎は新しい製品化にデイトに交渉している。デイトが眷属神だとまだ知らないようだ。環はまた驚いている。




「お待たせしました。はじめまして、女神アマテウスの代行者 環さん。わたしは、女神アマテウスの眷属神デイト・ア・ボットです。」


「改めて、環様ご無沙汰しております。」


「瞬間移動の魔法があるのは凄いなー!皇女様お久しぶりです。」




 環は唖然としている。我に返り挨拶をする。




「はじめまして、デイト・ア・ボット様…それにあざみさんと柴崎さんご無沙汰しております。」




 女神の代行者と眷属神が直接会うこととなった。

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