第28話 27-ロスビナス皇国の都ロスビナスシティ

 鮮やかなピンク色のトンネルを馬車が進む、門まで到着すると、門番の騎士がマノーリアと梔子に敬礼して門が開門される。街の中に入ると、先程の大樹がこの都の中心にそびえる。葵のいた世界の木蓮の木とは、少し違うようだ。かなり幹も太く大きい、あの木に2月末に白と紫の花を満開にし、春の訪れを最初に知らせる。各門からの道は中心に向かい、大樹へ続いている。その道から、碁盤の目のように道が作られている。その街並みは、やはり日本の景観に似ており、葵に懐かしさを感じさせる。大正や昭和初期の日本ぽいかな?くらいでリアルな感じでなく、映画やアニメの和のスチームパンク的、時代とかに近い、もしくは、観光地の電柱地中化され、和モダン的な色を統一した景観にも感じる。これで道がアスファルトだったり、信号機や標識があったり、観光地仕様の色が茶系や藍色のコンビニがあったら、日本の観光地と見間違うかもしれない。




「葵くん!ロスビナス皇国の都へようこそ!感想は?」


「綺麗な街並みだね!やっぱりどこか日本似てる。なんか落ち着くよ」


「葵も早く街になれるといいね」


「ところで、都って言ってるけど、街の名前はないの?」


「元々、ここがロスビナスなの、だから都と呼んでいるわ、後は、ロスビナスシティとか呼んだりするわね」


「マニー!このまま、大社に向かうでいいよね?」


「そうね、まずは環さんに報告しないと」




 街を中心に進むとマノーリアと梔子を知る、人に声をかけられる。




「マノーリア騎士長お帰り~!」


「マニー!クーお帰り~」


「マノーリアお姉さん梔子お姉さんお帰りなさい!」


「ただいま~!みんな元気そうね!」


「ただいま~みなさんありがとう。おかわりなさそうで、風邪などひいてないですか?」




 マノーリアと梔子が騎士として、街の人達から慕われているのがわかる。大人から子供まで、梔子やマノーリアのまわりによってきて、ふたりの帰国を労う。




「ところで、マニーちゃんとクーちゃんといる兄さんは見覚えがないな?」


「彼は、日本から転移した神無月葵くんです!今は、騎士団で騎士見習いをしています。もう、見習いじゃなくても、良いくらいの実績積みましたけどね。」


「神無月葵です!よろしくお願いいたします。」


「おう!よろしくな!困った事があったら何でも言えよ!みんなで応援すっからよ!」


「ありがとうございます!」




 人だかりにひとりの男性が来て声をかける。




「騎士長!帰って来たのか!彼は日本人か?」


「あっ、菅原さん!ただいま戻りました。彼は神無月葵くんです。葵くん、菅原さんです今は刀鍛冶をされているわ、菅原さんも転移された方よ」


「はじめまして、菅原さん!神無月葵です。」


「あぁ、よろしくな神無月くん!いろいろ、苦労もあるだろうけど、この国にいればなんとかなる。こっちの世界に慣れれば、そこまで悪い世界でもない」




 菅原は30代の男性で華奢だが、職人だからか筋肉質なのが、服の上からでもわかる。




「菅原さん、今日は環さんに報告をするので、近いうちに、葵くん連れてお店に伺います。」


「わかった。皇女様も早く顔を見て安心したいだろうから、早く行ってやれ!」


「じゃあねぇ~!菅原さん!」


「あっ、クー!咲と花は元気か?」


「うーん、途中でふたりは帝国行ったし、でも、ハリーとも、あっちで会ったみたいだから、元気だと思うよ、兄貴も一緒だし大丈夫だよ!」


「そうだな、悪いな呼び止めて」




 3人は街の人達に手を振って、別れを告げ皇女の元に向かう。葵が先程の梔子と菅原の会話の疑問を尋ねる。




「クー!菅原さんって咲や花と関係があるの?」


「菅原さんが転移した時に保護したのが、ふたりのお父さんで、そのお父さんが亡くなって、菅原さんもなんとなくね…父親が代わりはできないけど、ふたりを気に掛けているみたい…」


「そっか…ふたりのお父さんも…やっぱりストロングスピア防衛戦で…?」


「いや、ふたりのお父さんは、びゃく兄の鳳凰の試練の同行した時に、ハリーとね…その時に…」




 梔子はなんとも言えない表情をする。




「ベテランの優秀な騎士だったそうだけど…わたし達も直接お仕事したことないから」


「ふたりが騎士になる決心をしたのも、お父さんのような騎士になりたいかららしいよ!」


「あいつらも強い意思もって、騎士になってるんだな!見習わなきゃな!」




 そして、皇女の環のいる大社に到着する。大社は街の北側の大分をしめており、そこに大社と元老院議事堂などの国機関の建造物が並ぶ、今まで他国の建物は神殿と言っていたり、見た目も神殿と言う感じだったが、ここは神社や寺と言った建物をしている。鳥居はないが、大社への参道には、何本もの円柱の柱が、等間隔に両脇に並び、その色は赤が塗られており、柱の下の方に金と黒の線が引かれている。その参道入口にひとりの女性がたっており3人気がつき一礼し近づいてきた。




「お帰りなさいませ、マノーリア様梔子様。そしてはじめまして、神無月様」


「柊さん。ただいま、お迎えに来ていただけたんですか?」


「ええ、ちょうど環様が御所へ移動されたところなので」


「葵くん、こちらは柊さん。環さんの筆頭側使いをされている方よ」


「はじめまして、柊さん。神無月葵です。」




 柊はスレンダーな、20代半ばくらいに見える女性で、艶やかな黒髪は、前髪はまゆのあたりで揃えられ、髪は後ろで丸く束ねている。切れ長の瞳と唇の左下にほくろがあり、クールビューティーと言った雰囲気で、服装も黒のワンピースはロングで、腰にベルトいやコルセットのようなものを着けている。編み上げのブーツを履いている。柊に案内されて、環のいる御所へ向かう。庭に綺麗に花壇が手入れされいろいろな花が咲いている。ひとりの女性が水やりをしている。




「環様お三方をお連れ致しました。」




 柊が彼女に声をかけて一礼し、その女性が振り向く




「タマちゃんただいま~」


「お帰りなさい!梔子さん!マノーリアさんもご無事で!神無月さんいらっしゃい!皇女をさせていただいている。環と言います。よろしくお願いしますね!」


「神無月葵です。よろしくお願いいたします。」




 葵はこの国の象徴である皇女環と対面することとなった。葵の今後の人生に大きな影響力をもつ女性と初対面となった。


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