第13話 12-霊峰デイト・ア・ボット
マノーリアと梔子と風呂の前で別れ、当然、葵が先に風呂から出て来てふたりを待つことになる。女性の風呂の長さにはなれているので、苦にはならないが、スマホもないこの異世界では、手持ち無沙汰だ。暇になると思い風呂に入る前に、ふたりの支獣を借りることにした。この宿の一階は、フロント以外にテーブル席があり宿泊客以外でも、食事ができるようになっている。そこの端のテーブルに座り、2匹の支獣と遊んでいる。マノーリアと梔子のコピーといってもいい支獣は、性格も似ているので、はやぶさのユキは葵の頭に乗って葵にちょっかいをだしている。ペガサスのアリスは、おとなしい性格で、葵の膝の上で撫でられて喜んでいる。マノーリアと梔子が葵と良好な関係だからか、支獣もなついている。はやぶさのユキを腕に乗せてエサを投げると飛んで取りに行って戻って来る。エサといっても、支獣達は基本エサを必要としない、エサのような物で、魔物の魔石を粉末にして練り上げた物らしい、見た目はカラフルなタブレット菓子に見える。特に与えて魔力を補給するというわけではないようだか、支獣はこれだけは食べるようだ。アリスもタブレットを投げると翼をパタパタと羽ばたかせ取りに行く、アリスとユキも仲が良くじゃれている。
「ふたりともかわいいなぁ~!」
葵が支獣と遊んでいると、マノーリアと梔子が風呂から出てくる。
「お待たせ~!葵」
「葵くん、お待たせ、だいぶ待った?」
「いや、ユキとアリスと遊んでたから、気にならなかったよ、でごはんどうする?ここでも食べれるみたいだけど。」
「せっかくなら、そとに食べに行きたいけど…明日は早いからね」
「そうね、残念だけど、今日はこちらで済ませましょう」
宿の食事が、まずいわけではないが、なんとなく外に食べに行く習慣がこちらではあるようだ。安宿は風呂も食事もないので、外に食べに行くのが普通のようだ。ここの宿の食事は充分な味だった。葵は壁にかけられた風景画が目に入った。
「葵!何見てるの?」
「いや~、あの山の絵が綺麗だな~と思ってさ」
「霊峰デイト・ア・ボットの絵ね、眷属神デイト・ア・ボットが最後に創られた山で、そちらに眠られているとされているわ、旧道の一番標高の高い所に神殿があるわよ、明日入山するのがこの山ね」
「へぇ~、そういえば、旧道には結界がないんだよね?」
「まったくないわけではないの、さっき言った神殿や途中に小さな休息用山小屋が設けられているわ、そこだけは結界があるので安全よ、あそこに、周辺の地図があるわね!」
マノーリアが地図を持ってきて説明する。
「今でも、旧道の結界は生きているの?新街道できて利用する事ないんじゃない?」
「それはないと思うわ!霊峰の街道よ参拝する人も多いし、この辺りは眷属神デイト様の信仰が強い地域だから、地域の人達が徹底的に管理しているわ」
「この辺りの人とドワーフの人達はデイト様への信仰が強いからね~」
「そうなんだ、なんで?」
「ドワーフの人達は、最高神の女神でなくデイト・ア・ボット様お産みになられたからじゃないかしら、この地域の人達は山脈を作って邪神や魔族を西側への侵入防いでくださったから、先祖が生き延び西側が発展したって考えの方が多いのよ、この辺りだけでなく、王国や帝国でも東に比べると最高神の次に信仰が強いのはデイト様よ」
この大陸の中央に南北に山脈が連なる。守星大戦時に最高神アマテウスの命により、大地創成の眷属神デイト・ア・ボットが山脈を創った。その際に西側へ、負傷兵や老人、魔力の低い者、子供など戦いにむかないものは、西側へ送り出した。旧街道は1000年ほど前からあり、西側と東側の交流を生んだ。500年前に新街道を開通させる話がはじまり100年かけて開通させた。新街道の開通により、山脈越えも護衛なしで進むことが出きるようになり、貿易が盛んになり、各国の発展に貢献している。
「皇国は女神の代行者だっけ?皇女様を信仰なの?」
「いいえ、あくまでも最高神と眷属神を信仰しているのよ、皇女様は女神の代行者、ウズメ様の能力を後継者としているの」
「まぁ~話しはつきないけど~明日は日の出と共に出発だから部屋に戻ろう!」
3人は部屋に戻る。約束通り葵は魔法をかけてもらう。
「葵くんホントにいいの?わたしもクーも葵くんは、大丈夫だと信じているのだけど?」
「いや~、俺が眠れるかわからないから…明日は山に入るならしっかり寝ておきたいんだよね」
「わかったわ、魔法もそこまで万能じゃないから、朝まで眠れるかわからないわよ」
「了解!じゃ~よろしく~!」
葵はソファに横になり準備する、マノーリアは闇魔法のディープスリープをかける。葵はすぐに寝息をたてる。
「もう、寝ちゃったみたいね!」
「そうね、これで少なくても3~4時間は寝ていられると思うけど…本当によかったのかな?変な副作用でなければいいけど……」
「副作用ってどうなるの?」
「かなり現実的な夢を見ると言われているわ、本人にとっていい夢ならいいんだけど、悪い夢ならかなり寝苦しいと思うわ」
「本人の希望だし、それくらいならいいんじゃない?ところで、マニーもう寝れる?寝つけに少し飲まない?」
「そうね、寝室の窓際なら月明かりで飲めそうね!」
「じゃ~あたし下で、氷とかもらってくるね!」
「ありがとう、グラスとか用意しておくわね!」
ふたりは、この後葵の寝言と寝姿に悩まされ、深酒をしてしまう、朝方ヒールをかけるのであった。
「すげー良く寝た!なんかいい夢を見た気がするけど、まったく覚えてないなぁ~夢なんてそんなものか…」
葵は、なんとなく気配を感じ寝室を見る。マノーリアが酔ったせいか、はだけた感じに寝ている。宿の部屋着は浴衣に近い、一枚物で帯びはなく、縫いつけてある紐をくくる程度の簡単な衣服で、寝ている間にはだけたのか、胸元や足が露となっている。マノーリアがいつも品のある事を考えるとあまりにも、乱れていて、目のやり場に困る
「せっかく、魔法で寝てても寝起きにこれじゃ~案外マニーの方が寝相悪いな…酒苦さっ!ふたりともあの後、酒飲んだのか…まだ日の出まで2時間くらいか…はぁ~トイレ行ってくるか…」
葵はマノーリアと梔子に毛布をかけ、トイレに向かう。すると梔子が起きていたのか、むくりと起きてマノーリアに頭を下げて小声で謝るが、マノーリアは熟睡中だ。
「マニーゴメン!間に合わなかった~!あっ~熟睡中か~ついさっきまで起きていたのに、やっぱりお酒飲みすぎたかぁ~仕方ない寝よ!」
梔子は毛布を頭までかぶりベッドに潜り込む。梔子は職業病か眠りが浅く直ぐに起きたようで、葵の気配で起きたのだが、マノーリアの寝姿までは正すことはできなかったようだ。葵は目が覚めてしまったようで、部屋にいると悶々としてしまうので、そのまま浴場に行くことにした。山の麓で温泉が涌き出ている為、この宿の浴場は常にしよう可能で、葵は時間潰すにはちょうどいいと思った。葵はゆっくりと風呂で過ごし、それでも時間が余ったので、テラスに出て風に当たる。まだ春先の気候と山の麓の為か、外の空気はかなら冷たい。
「うー!さぶっ!長くはいれないな~中入ろ」
やはりテラスは寒いので、一階テーブル席に移動する。既に厨房からは朝食の準備をしているのかかすかな音と人の気配を感じる。すると厨房からコンシェルジュらしき人が出て来て目が合う。するとその男性が葵に声をかける。
「おはようございます。お客様。もし、よろしければ温かいお飲物をご用意いたしましょうか?」
「ありがとうございます。お言葉に甘えていただきます。」
ウェイターが手早く用意してくれ、葵の前に湯気が立つ、コーヒーのような飲み物が出された。
「本来は、まかないのお茶ですので質は落ちますが、よろしければ」
「ありがとうございます」
葵は一口口にふくませると、やはり味はコーヒーに似ている、苦味の強くエスプレッソのような苦味を感じるが口残りがせず。苦味が美味しい。
「美味しいです!なんてお茶ですか?」
「カヒというお茶です。カヒの豆を煎って粉上にして、お湯で溶いて飲みます。朝の目覚めにきくお茶です。朝早い仕事をしている人は愛飲してると思いますよ」
「気に入りました。他のお茶よりも好みですね。確かにスッキリして眠気がなくなりました」
「土砂崩れで足止めされ、同行されるご婦人と同室というのも、こちらの都合とはいえ、男としては気苦労が絶えないかと思いまして、せめてもの償いです。」
「ハハハ、お見通しでしたか…」
「長年この仕事をしていますと、なんとなくですが、お客様の行動を見ていると…」
「もし、仕事の邪魔にならなければ、話し相手になってもらえますか?」
「喜んで、おつきあいいたしましょ!日の出くらいまでおつきあいすればよろしいですか?」
「すみません、よろしければ」
コンシェルジュは自分用のカップも用意しカヒ茶を自分の分も注ぐ、日の出までは30分程度あったが、葵は話し相手を見つけて、有意義に過ごすこととなった。葵はコンシェルジュに礼をいい部屋に戻る。ふたりとも眠そうな顔しながら、ソファに座っている。
「おはよ~ふぁ~あおい」
「おはよう、葵くん、ま、魔法で良く眠れた?」
「おはよう、おかげで、凄く眠れたよ目覚めも良かったし!久々に良く寝た!って感じだった!」
「あ、さ、そうなんだ、それで、葵くん何か夢でも見てた?」
「う~ん、確かにいい夢を見た気がするんだけど、覚えてないんだよなぁ、案外いい夢の時ってそんなもんだよね~ふたりは飲み過ぎたみたいだけど」
「あ、葵の寝言で目が覚めたから、深酒にな、なったんだからね!」
マノーリアが聞きづらそうに聞き、梔子に軽くお前のせいと言われる。葵はこの様子は寝言で変なこと言ったのかな?と思いつつ、相部屋になったので仕方なく、俺のせいじゃないと出発の準備をする。
「まぁ、クー仕方ないわよ、寝言だし葵くんも夢はどうにもできないから…」
マノーリアは頬を赤らめ梔子を説得している。
「そうなんだけどさ~やっぱり葵も男だよね~」
「俺やっぱり変なこと言ってたのか?」
「変どころじゃないよ!変態だし!スケベだし!」
「なんて言ってたの?」
「あ、あたし達の口からいえるわけないでしょ!」
葵はここぞとばかりに、そのまま美少女に言わせようと試みるが失敗する。準備を終えて馬車に乗り込む。先程のコンシェルジュや従業員に別れを告げて街を出て封鎖中の新道を通りすぎて旧道に入る。
「あの門から先は結界がないから!モンスターや魔族に気をつけて!ユキちゃん先行よろしく!」
「わかったわ!アリス頑張ってね!」
「ユキちゃんが先行して敵が出てきたら攻撃するけど、数が多ければみんなで倒すよ!スピードは落としたくないから、基本は魔法で葵は加護の力も使ってね!今日中に神殿に到着するからね!」
「了解!」
新街道は次の街は昼過ぎにはつけるが、旧道で山を越えるのに通常4日はかかるらしい、それを2日で越えようとする為、かなりのスピードで進む必要がある。馬車を引くのが支獣であることと、先行して支獣が攻撃を担うから出来る。朝食は3人共に馬車内で済ませ、昼食は途中の4つ先の山小屋で休息をする。それまでは進めるだけ進む。道中ユキとアリスがてこずるような敵もでず、予定どおり16時頃には神殿に到着する。
「着いた~!案外、人がいるもんだね~?」
「新道封鎖しているし、信仰心も強い場所って昨日言ったでしょ~」
「でも、なんかイメージ違うな」
葵は、神殿と聞いて海外の神殿とかをイメージしていたが、どことなく神社にも見えるような、神殿に見えるような、自分のイメージとは違うと感じた。一番違和感を感じたのは、神殿の端の平屋の建物前の広場で数十人の人が武術の訓練をしている。
「少林寺……………?」
葵の中の一番近いイメージが口から勝手に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます