書き出し小説集『塩』

さくらぎ(仮名)

書き出し小説集『塩』

 そこに塩があった。



 ミラとモコは空中ブランコで空を漂っている。



 地球から湿度が失われた。ついでに鉄も。



 兵庫県のかどにはそれぞれ一羽ずつ八咫烏が住んでいる。



 ここから見える景色は果して現実だろうか?



 隣の席のうしおくんは今日も学校に来なかった。



 「あ、あのガレージ」美保子は顔をやや斜め上に向けて指差した。



 私たちは同じところから来たらしい。



 鹿。鹿。鹿。目の前に無数の、鹿。僕は怖くなった。



 「ねぇあなたの画面、今なにが映ってるの?」彼女は唇をいやらしく突き出してそう聞いてきた。



 駅に着いた。もうずいぶん久しぶりだ。車窓から見えた景色は五年前からまったく変わっていないようにも見えたし、当時の面影なんてもう跡形もないようにも見えた。僕は故郷の景色を忘れてしまっている。



 その少年は右手に雨傘を差して立ち竦んでいる。



 とんがり帽子を冠ったあの子はみんなの笑いもので、彼女はいつも下を向いてくすくす笑っていました。



 「人参を残したんです。――嫌いで」



 よく晴れた、静かな夜のことでした。



 ふわふわの鉄。愚かな人間が生み出した、これが新しい神。



 「僕はまだどちらも経験していないからこそ逆に言い斬れるんです。煙草とセックスは絶対に似ている。挿れて、挿れられて、出して、出されて、気持ち良くなって、宿る。産まれる。そう、モノが違うだけで、本質は同じなんですよ」



「先生!山根くんの大根おろしがなくなりました!」

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書き出し小説集『塩』 さくらぎ(仮名) @sakuragi_43

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