第4話 身代わりの出番



 家庭教師の仕事は順調だった。

 王子様の物覚えが良いから、勉強はいつも問題なく進んでいく。


 仕事以外の暇な時間は騎士のお弁当を作る事もあった。


 私を助けてくれた騎士団に礼をしたくて城にやってきたというのがもともとの話だった。

 なので、それ以外でも出来る事はなんでもやった。


 文字を覚えるのが苦手だという騎士に要点を教えたり、彼等の部屋を掃除したりもした。


 家に帰れた直後は、辛い事がたくさんあった城に戻るのが嫌だった。


 けれど、彼等と共に過ごすうちに、過去の辛い日々を忘れていく事ができた。


 そんな中、赤の国の要人達が元の国を取り戻そうとしているという話を聞いた。


 王女様を見つけた彼らは、国を取り戻そうとしているのだとか。


 けれど、そんな彼らは、私の知っている騎士団の者達に、あっさりと追い詰められた。


 しかしそこで誤算が生じたらしい。


 大規模施設に立てこもった彼らは人質をとってしまったのだ。


 それで、膠着状態に入ってしまっているのだとか。


 その状況を何とかするために、私はある申し出をした。


「私は王女様のふりをすることができます。それで気を引いているうちに、人質の救出作戦を行って下さい」


 それは過去の辛い日々を思い起こさせるものだったが、お世話になった騎士団の人達に恩を返す事ができるなら、我慢する事ができた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る