例えば、俺がゲームをプレイするなら、まずレベルをマックスにまで上げてからプレイする

@toyase

第1話 異世界召喚は強制で

 この世は弱肉強食だ。

 弱い奴は負け、強い奴は最後まで勝ち続ける。

 そんな中、今の今まで生きてきて一度たりとも負けた事のない男が一人。


 ───────俺だ。

 ありとあらゆる勝負に勝ってきた俺は、もはやこの世に俺の不可能は存在しないと思っていた。

 なんせ俺は勝利絶対主義者。

 ゲームをプレイすれば、序盤の街で雑魚モンスターを狩り続けてレベルマックスにしてからプレイするし、じゃんけんも全身全霊で取り組む。

 それこそ負けた事が無いほどだ。俺の勝利はもはや生まれてこの方揺らいだ事が無い。


 なのに………それなのに………


「なんじゃこれはぁああああ!!!

 どうして俺が異世界召喚などに………!!」


 そう、ここは異世界だ。

 最後まで女神と乱闘した後、結局強制的に異世界へ飛ばされてしまった。

 これは俺にとって最大の屈辱。

 生まれて初めての負けと言っても過言では無いだろう。

 

「まさかこの俺が異世界に………そもそも俺は誰に何の目的で召喚されたんだ!?

 しょうもない理由だったのならその召喚主をボコボコにして………」

「あ、ぁはは。

 私が貴方の召喚主です。」


 女………この女が俺をこの世界に呼んだというのか?

 一見すると高校生くらいの身長。

 胸はB?A?検討も付かん。

 それになんだその服装は………まるで魔法使いのコスプレじゃないか、みっともない。


「俺を呼んだ要件はなんだ貧乳コスプレ女。

 しょうもない理由だったのならお前を即刻殺す。」

「わ、私が召喚主ですよ!?

 それも私は成長期なんです、あとから大きくなるの!!

 そ、それに貴方は私に逆らえないんですから!!

 ─────"支配の楔くさび"」


 俺の周りに鎖が浮いている。

 これが支配のくさび

 

「笑わせてくれるな。俺は勝利絶対主義者だ。

 誰かの支配は受け付けんし、それこそ俺の上にあろうとすること自体、不愉快極まりない。」


 俺に鎖が触れた瞬間─────先端から全ての鎖が弾け飛ぶ。


「う、嘘………召喚主の鎖を弾き返した!?

 貴方は何者………というかどうして鎖が弾けるのよ!?」

「一応は俺の情けだ。

 何故、俺をこの世界に召喚したのかだけは聞いておいてやろう。返答次第ではお前をこの世界の仲間、第一号として認めてやってもいい。」

「あ、貴方を召喚したのは魔族を導いてもらう為です。女神様に頼んで勇者に対抗しうる魔王の器を呼び寄せていただいたのです。

 私の名はアク。世界の命運を管理する者です。」


 魔王の器だと?

 女神は俺を魔王の器に足ると判断して呼び寄せたという訳か?

 そしてこの女は世界の命運を管理する者らしい。大層な志だが、俺を御せない辺りこいつも三流管理者と言ったところか。


「俺は魔王なのか?

 それ程の力に目覚めた感触も無さそうだが。」

「な、何を言ってるんですか!?

 貴方のそ、そのオーラは並の魔人を遥かに上回っています!!

 そ、それこそ空間が歪んで見える程です。」


「オーラ?

 オーラとはなんだ………何か不科学的な力や現象が存在するのか?」

「オーラ、というよりかは魔素量の問題です。

 貴方は今、膨大すぎる程の魔素もとい魔力を放出し続けています。

 本来、これ程の魔力を持ってして生まれることはありませんが、貴方は桁が違いすぎます。

 一刻も早く魔力操作と魔力感知を習得してもらわないとこの空間内に大量の魔物が生まれてしまいます。」


 魔力………魔素。

 流石は異世界と言ったところか。

 力には定評のある俺だが、流石に隕石を頭上に落とされては太刀打ちができない。

 この異世界で勝ち続けるには、それ相応の魔力操作力と魔力総量、それに加えて一握りのセンスが必要になりそうだ。

 あと魔法の習得も必須だな。



「アクとやら、俺に魔力操作と魔力感知を教えろ。

 出来るだけ簡潔かつ分かりやすく。」

「え、え!?

 魔力操作は血を巡らせる感じで………えっと、魔力感知は部屋の中を隅々まで監視する感覚、でしょうか?」


 全身の血を巡らせる、か。

 肺の空気を全身に巡らせる感覚と同義なのか?

 魔力感知は部屋の隅まで知覚すると。


「こんな感じか。

 どうだアク、俺の魔力は操作できているか?」

「は、はい!!

 確かにオーラが内側に消えていきます。これなら人間………魔人とも区別付きませんよ!!」


《スキル『魔力操作』『魔力感知』『気操作』を習得しました。》


「おぉ………これがスキルを獲得する感覚か。

 俗に言うレベルアップの声が聞こえる。」

「あ、スキルを獲得できたのならステータスを確認してみるといいですよ。

 貴方の個人情報と戦闘力が大まかに理解できますから。」

「ステータス?」


 俺の叫びと共に、目の前に透明なボードが現れる。

 



ステータス

 個体名:鷹司たかつかさはじめ

 種族名:半人半妖

 レベル:1

  称号:異界の魔王・勝利の星

  加護:異界の庇護

  魔法:〈陰魔法〉〈眷属召喚陣〉〈蘇生魔法〉

  技能:『勝利者ギャンブラー』……高速演算・取得経験値量増幅・未来予知・思考加速

     『覇者エンペル』……覇気・覇運・覇剣

     『隠遁者ハンヨウ』……陰移動・気配操作・多重気配・妖刀召喚・能力看破

  常用:【魔力操作】【魔力感知】【気操作】

  耐性:【干渉系無効】


 HP:1000/1000

 MP:1000/1000

 STR:1000 VIT:1000

 AGL:1000 INT:1000

 DEX:1000 LUK:10






「種族が半人半妖………魔法に技能スキル、耐性と常用系の効果。流石は異世界、何でもアリだな。」


 常用系が魔力操作などの効果単体の名前なのに対して、技能スキルは様々な効果がまとめられた感じだ。

 恐らくは技能スキルが多いほど強く、技能スキル無き者が技能スキルを持つ者に勝つことはまず不可能。それだけ強力な効果が詰められているのだろう。

 その点で考えると技能スキルが三つもあるのは棚ぼただな。



特殊技能ユニークスキルが三つも!?

 それに加護と魔法まで与えられてるだなんて………」

「そんなに凄い事なのか?

 俺が魔王の器だと言うならば、この程度当然だろう。気持ち的には全然足りないくらいだ。」

「何馬鹿なこと言ってるんですか!! 

 生まれたての魔王なんて技能一つも持っていませんよ………それこそ勇者に一撃でやられてしまうくらいには。」


 俺が魔王であるように、勇者も存在するのか。

 そしたら勇者対策が必要になってくるな。


「アク、お前を俺の仲間第一号に任命する。

 この世界で最も弱く、それなりの経験値を得られる敵を教えろ。

 解答によってはお前を狩る。」

「物騒すぎますよ………ちなみに、この世界で一番弱いのはスライムですね。

 適当な"酸弾"しか使えない筈です。」

「ほう。

 ならば今日のノルマとしてスライムを千匹狩るとしよう。スライムの出現しやすい場所へ連れて行け。

 異世界なんだから転移魔法くらい使えんだろ?」


「それが人に頼む態度ですか!?

 まぁ、私は管理者ですから連れて行ってあげますけど………って、千匹!?

 今千匹って言いました!?」




 






    



 一方その頃の転移先、始まりの街「ステラ」はと言うと─────


魔王粘性生物デモンスライムが出たぞー!!

 は、早く逃げないと………皆んな食われる!!」

 「嘘でしょ!?

 あれが復活する周期はまだまだ先だった筈………まさか魔族があの封印を解いたと言うの!?


 ただの魔王クラスのスライム出現により街中が絶望と混乱の渦に包まれていた。

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