第一章 勉強会(仮)



「それにしても、新太が幹部リーダーとは出世したな~」

「誰のせいだ、誰の」

 

大輝が嫌味ったらしく話す。そんなに人の不幸が嬉しいですか?

 

「まあまあ、俺らだって困ってるんだぞ?次の定期考査って一番補習者が多いだろ?」

 

梗平の話に少し納得してしまう。

確かに新太が推薦したせいで幹部になってしまった節はある。

正直、新太にとっては二回目ということもあり今回のテストは不本意ながら余裕があった。おそらく復習をしていればそこそこの点は取れるだろう。いくら一年前といえども、そう簡単に全部は消えない。

だが、梗平のいうとおりこのテストは体育祭の影響で最も補習者が多いテストである。

新太も去年はなかなか苦戦したし、幹部をやっていたら危なかったかもしれない。

 

「テスト勉強やんなきゃな」

「……そうだな」

「大智に勉強でも教えてもらおうかな?」

 

確かにそれは有りだ。大智は何故か頭が良い。クラスでも上位十人に必ず名を連ねる程に。ホント何であいつ頭が良いんだ?金と女のことしか考えてなさそうなのに。

 

「でも、あいつ変態みたいな解き方するからな‥‥‥」

「……そうだ!」

「うおっ!びっくりしたぁ。何だよ急に‥‥‥」

 

今まで黙ってた大輝が急に何かを閃いたようだ。

 

「なあ、勉強会やんね?」

「「勉強会?」」

 

勉強といえば、みんなで集まって勉強するっていうあの非効率的な勉強法の事か?

正直、都市伝説くらいに思ってたぞ。え、いやだって、絶対意味なくない?一人の方が捗るだろ勉強は。

 

「そうそう、勉強会を開いて皆で補習回避しようぜ」

「へぇ、良いんじゃないか」

「あとは、場所どうすっかな~」

 

いや、あの、何でナチュラルにやる流れになってるんですか?

もちろん新太に参加するつもりはさらさらない。

ここは早めに断りを入れておこう。

 

「悪いんだけど――」

「新太ん家とかどうだ?定食屋だったら定休日の日とか使わせてもらえないか?」

 

大輝が新太の断りを遮る。

いや、確かに新太の家は定食屋を営んでおり、店を使ってないときには新太も勉強に使わせてもらったりしている。

だが、そもそも新太は勉強会に参加する気がない。

ここは用事とか適当にごまかして諦めてもらおう。

 

「悪いんだけど――」

「それ良いな。俺も前にお店使わせてもらったことあるし、勉強する環境としてはすごく良いんじゃないか」

 

またもや、新太が話そうとしたときに梗平と被る。しかもどんどんまずい方向に事が進んできている。

これは早めに断らないと取り返しのつかないことになりそうだ。

新太は遮れないように間髪入れずに口を開いた。


「あの――」

「問題はいつにするかだよなー」

「ねぇ、さっきからお前らわざとやってる?」

 

もはや悪意まで感じる。

 

「何だよ、新太?」

「急にどうした?」

 

おい、嘘だろ?さっきからずっと喋ってたんだが?

 

「いや、俺参加するつもりないんだけど‥‥‥」

「へ?いやいや、お前は参加しなくちゃだろ?」

「そうだぞ、お前がいなかったら場所とかもろもろどうするんだよ」

「そうだそうだ、急に言われても困るぜよ」

 

ねえ、何でさっきから俺が行く気満々みたいな体で話してるの?

最初から行くなんて一言も言ってないのだが。ていうか発言権すらなかったんだけど。

 

「な?頼むよ。俺らを助けると思ってさ」

 

そこを突かれると痛い。

去年ギリギリ赤点回避している姿を見ている分、余計に心苦しい。

新太は、熟考の末に二人の提案を飲み込むことにした。

三人くらい余裕で入れるし、今回はそんなに勉強する必要はないだろう。少しくらい手助けしてあげても問題ないか。

 

「……はぁ、分かったよ。店の定休日に借りれるか相談してみるよ」

「おお、まじか、ありがてー!」

「悪いな、無理言って」

「まあ、いいよ」

 

こうして、多少強引に新太の予定に勉強会(仮)が組み込まれたところで三人は駅前に到着していた。

 

「この後、マック寄らね?」

「まあ、もう少し具体的に話まとめたいし、俺は良いよ」

 

梗平が大輝の提案に了承する。

多分、新太も当事者として参加したほうが良いのだろう。だが、今日ばっかりは参加することができなかった。


「悪い今日はこの後、用事あるから俺は帰るわ。話が具体的に固まったら連絡してくれ」

「ああ、分かった。じゃあな」

 

新太は梗平と大輝に別れを告げ、目的の場所へと向かった。

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