第3話 縁《えにし》

 長瀬は、この前の大家さんのような『鳩が豆鉄砲を食らったような顔』でユイを見た。


 困ったな……何か言いわけしないと……と考えていると、長瀬が姿勢を正し、挙手の敬礼をしながら「はっ、自分は、オジカ事務用品、関東営業所所属『長瀬ながせ正治まさはる二等にとうであります。 たいら殿とは同じ部隊であります。」と言った。


 ……なんだ? 最近は兵隊ごっこが流行はやってんのか??


 ユイは例によって……「あたしは衛鬼兵団えいきへいだん司令官、『たいら ユイ』大将である。 現在は指揮権を兄に移乗いじょうし、サポート業務にいている。」と言いながら『兄』の時に、俺を肘で小突こづいた。


「はっ! おつとめお疲れ様です。」 長瀬が再び敬礼した。


 ユイも「ふむ。貴官も休暇返上、ご苦労。」と、答礼した。


 ……この二人、初対面なのに随分話が合っている。 ……が、『あります』だの『貴官』だの、固っ苦しい言葉の応酬に、俺は頭痛がして来た。 腹も減って来たし、盛り上がっている二人をよそに、公園の手すりに腰掛け、洋風弁当を食べ始めた。


 早々に食べ終わってしまい、俺がまた鷹音ようおんさんの動画を観ながらまったりしていると、二人が駆け寄って来た。


たいらさん、すみません。すっかり盛り上がっちゃって」……良いよ~。ユイも楽しそうだったし。


「それで、実は来週の土曜日なんですが、俺のチームのサバゲ大会があるんです。ユイさんに、是非参加して頂きたいんですが、良いですか?」 ……なるほど、サバゲをやってるからユイとも話が合うんだな。などと考えていると、二人のキラキラした視線が突き刺さった。


「良いよ」こんな目で見られてたら許可しない訳にはいかない。


 長瀬はノリノリで、ユイに敬礼し「閣下! では、当日お迎えに上がります」ユイも上機嫌で「うむ、期待する」と、答礼した。


 長瀬は俺に「ジュース、ご馳走様でした。じゃ、また明日~」と言って頭を下げ、別れた。


 ユイは長瀬をいつまでも見送り、長瀬も度々たびたび振り返り、その度に手を降っている。


 男女の出会いって、こんなにスムーズなんだな~……と感心させられた。


『運命の出会い』……良く耳にするけど、そんなの、夢の世界か、遠い出来事だと思っていた。しかし、今この二人をの当たりにして、改めて『運命』について考えさせられた。


 ……俺と鷹音ようおんさんは、運命の糸で繋がっているのだろうか……?

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