第7話 時間滑落《タイム・スリップ》

「『痩せ』……もとい『八瀬やせ』……って、今、作戦参謀が講義で言ってた昔の国だろ?」 


「そうだ」


「『そうだ』って、簡単に言うけど、コンビニにおにぎりを買いに行くのとはわけが違うんだよ? 君たちの世界では知らないけど、俺たちの世界では、『時間旅行タイム・トラベル』なんて不可能なんだ」


 ……何か、俺の鷹音ようおんさんへの片想いをバカにされた気がして、俺はちょっと腹を立てながら言った。


 ユイは気にもめない様子で……


「四の五の言わずに行くぞ。 既に今次作戦は進行中だ」


 ……と言いながら近くにある議事ドームのドアにてのひらを向けた。


 『ギギギ〜〜ッ』と音がして、ドアが観音開きに開くと、暗くて中は良く見えない。


 ユイに手を引かれ、歩みを進めるとドアが閉まり、その瞬間、室内に吸い込まれる感じがして、更に強い光に包まれた。


 あまりの眩しさに、目を開けられない。


 ……俺は、子供の頃に観たアニメのワンシーンを思い出していた。


 これは明らかに『タイム・マシーン』では無いが……


 まさか……これって……


 『タイム・トンネル』ってやつ?


 ……確か、この『光の道』を進むと、何処どこかで出口が開き、そこを出ると望みの『時点』に『時間旅行タイム・トリップ』出来るんだ。



 ……唐突に、ユイが繋いだ手を離した。


「お、おい! どこだ??」


 手探りで探すが、俺の手は虚しく宙を掴むだけだ。


 え? ……置いてけぼり?


 ……アニメでは、タイム・トンネルの中で経路ルートから外れると、目的の『時点』と全く異なる場所に取り残されてしまう。良く言う、『タイム時間スリップ滑落』と言うやつだ。


 時間ときの漂流者となった者は、その漂着した『時点』で、その一生を終える運命が待っている……。


 まばゆい光のロードの中で、俺は、只々ただただ孤独を感じていた……。


 さようなら、鷹音ようおんさん……。


 さようなら、令和……。


 SA・YO・NA・RA……。

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