第7話 異世界

ZZZZZzzzzz……


 はっ!


 ……慌てて時間を見ると……


 9時過ぎてる〜〜(泣) 


 スマホのアラーム鳴った?


 ……昨日『ユイ』こと『衛鬼兵団総司令』にテストか何かで全身を殴られ、文字通り『満身創痍』になり(まあ、俺の胸の『司令徽章』がほとんど防いでくれたのだが、痣と疲れは残った)、酔って寝ちゃったものだから、アラームに気付かない程、超熟(←パンではない)睡しちゃったんだな。


 ユイこいつをこのままにして会社に行ってしまうと、人類存亡の危機が訪れるのは昨日の公園で証明されたし、今更、慌てて会社に行っても、課長に怒られるのは目に見えているので、仮病を使って休む事にした。


 ……ふと、まだ気持ち良さそうに眠っているユイに目を向けると……何処どこをどう彷徨さまよっていたのか、窓から差し込む陽光に照らされた服や顔、そして手足は、かなり汚れている。


『せめて服の替えくらいは買ってやるか……』と、近くの衣料品店が開く時間を待って部屋を出た。


 ……と こ ろ が で す よ !


 当たり前だが、俺は女物の服なんぞ買ったことが無い。 サイズも判らんし、ファッションセンスなんぞ微塵も無い! どれを買ったら良いのか、皆目見当が付かない。


 ここは異世界だ! ……まさに、異世界に転生してしまったような気分に陥っていた。


 テレビやマンガでしか見たことがない、ブラジャーやパンティーだらけの異世界(←下着売り場)で、腕を組んで悩んでいると、『美魔女』みたいな女性店員さんが営業スマイルで近付いて来た。

 

 ……その時は夢中だったので何とも思わなかったのだが、後から考えてみると、きっと不審者だと思われていたんだろう。


「お客様……奥様へのプレゼントをお探しですか?」


『奥様』……か……。 確かに俺も、奥さんが居てもおかしくない歳になっちゃったな。


「いや! 妹が突然、着の身着のままで押しかけて来たので、取り敢えず服だけでも……と思って」


 と、咄嗟に嘘を返したが、半分は本当みたいなものなので、意外にスラスラと言葉が出た。


 それを聴いて安心したのだろう。 店員さんの表情が自然になり、色々とアドバイスしてくれて、年頃の女の子が普通に生活出来るくらいの服装を揃える事が出来た。


 感謝感謝です!


 今度はユイと一緒に来ることを店員さんに約束し、大量の荷物を抱えて、お店をあとにした。

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