第8話 倫理

……ぐっすり寝ていたユイが目覚めたのは昼過ぎだった。


「シャワーしな〜」……と言ったが、衛鬼兵団こいつらの世界には『入浴』という習慣が無いそうだ。


 ……俺たち人間は色々代謝するし『身だしなみ』という考え方があるから、1日に1回か2回、身体の汚れを綺麗に洗い流す……と説明し、シャワールームに押し込んだ。


 


 ……シャワーの音が、部屋中に響き渡る。


 いつもは自分が入っているから、この音を居間ここで聴くのは初めてだ。


 妹みたいなもの……とは言え、昨日知り合ったばかりのうら若き乙女が、今、俺の部屋でシャワーを浴びている。 一応、俺も男だから非常ひじょ〜に、たたたたまれない ← 動揺


 頭を冷やしに外出したいが、その為には|すりガラスのドアが透けすっけ透けすけのシャワールームを通らなくてはならない……。 これこそ、まさにジレンマと言うやつか?


 部屋をウロウロしていると、シャワールームのドアが開く音がして、ユイが出て来た!


「ああ〜っ、あづいぃ〜!」と言いながら、居間の真ん中に座り込んだ。……どうもこいつは、居間の中央を陣取る習性があるようだ。


 ……色白な顔や小振こぶりなバスト、キュッとくびれたウエストに、意外なほどまった手足は、全体的に、ほんのりと赤らみ、全身びしょびしょだ。


 ……ぜ! ぜんしん〜!?


「ば! 馬鹿! タオルくらい巻いて来い!」


 そこら辺にあった毛布で隠そうとするが


せ〜! 暑い〜っ!!」と嫌がっていでしまう。


 暑い寒いの問題では無い! これは『倫理モラル』の問題! ユイ、ゆいしき事態…… 由々しき事態…だ ←混乱


 ……エアコンと扇風機をつけて、ようやくバスタオルを巻き付ける事に成功した。


 ……はあ〜っ、どっと疲れた……。 危うく、本作品に年齢制限レイティングがついてしまう所だった。


 次は、俺がシャワーする番だ。 昨夜ゆうべままで寝ちゃったから、早くさっぱりしたい。


 居間への入り口は、念の為、カーテンを画びょうでめておいた。 カーテンの隙間から、俺の新品のYシャツを投げ込んで、ユイに着るように命じた。


 ふむ。 これで安心してシャワーできる。


 服を脱ぐと、例の徽章バッヂは、自動的にシャツに移動した。 更に、シャツを脱ぐと、まだ生々しいあざが残っている肌に、直接くっついた。


 ……俺は、孫悟空の頭にはまっているっかを思い出していた。


 ……もしかしたら、これ、一生取れない……のかな?


 まあ、良いか! 死ぬ訳じゃ無い! 俺の長所は、あきらめのさ、だ。


 やや熱めのシャワーが心地良かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る