第2章『秘めたる願い』

第1話 警報

 日が伸びたとは言え、そろそろ薄暗くなってきた。


 この辺りは夜も人通りがあり、治安は良いほうだ。


 ……だからと言って、この子をこのままにして帰るのは心配だ。 しかし、独身の俺のアパートに連れて帰るわけにもいかない。


「俺、そろそろ帰るけど、君はどうする?」

 と聴くと女の子は


「案ずるな。 ここで夜営する」……と言って、ベンチに座った。


「君たちの世界は知らないけど、この世界では君くらいの年齢としが夜の公園にひとりでいるのは危険だよ。 誘拐でもされたら大変だ……」 


「ユウカイ? ユウカイとは何だ?」


『誘拐』を知らないの!?


 ……あ、そうか……


 彼等のような誇り高き軍人は、人質を取って脅迫する……なんて姑息な戦法を使う筈がないから『誘拐』っていう概念自体が存在しないんだな。


 ……それにこの子は、大の男が力比べで負ける程の馬鹿力だし、他にも秘めた能力がありそうだ。 なにせ、この子の正体は、あの怪獣みたいな『衛鬼兵』? を五万ごまんと率いる『総司令』……いや『総司令』だもんな。 心配するまでもない……か。 


「じゃあ俺、そろそろ帰るね……」

 ……と言いかけた時、俺の胸に引っ付いている指令徽章から、けたたましいサイレンのような音が鳴った!


 何だ何だ何だあ〜〜!?


『空襲警報発令! 空襲警報発令! 未確認飛行物体、高速接近中!』


 未確認飛行物体……って? ……何も見えないけど……


 女の子が俺の胸ぐらを掴み、司令徽章に


「衛鬼兵第ひとふたまる航宙師団緊急発進スクランブル!」

 と命じたが、それとほぼ同時に……


『敵機直上! 急降下ーっ!』


 と、司令徽章から声がした!



 ひえ〜〜!  殺 さ れ る 〜 !


 まだ本題にも入っていないのに〜! ←内輪話うちわばなし


 ……そんな俺の焦りとは対照的に、前総司令の女の子は冷静に


「現時刻をもって本対象を『敵機エネミー』とし、我が『衛鬼兵団』は戦争状態に入る! 邀撃機インターセプター全機、目標に向け『収斂しゅうれん鬼光弾きこうだん斉射サルボウ!』


 と、指令を発した。


 まばゆい光と共に轟音が鳴り響き、大地が揺れた!

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