第13話 軍事費

 ……ただ、ひとつだけ確認したい事があった。


「……その、弁? とか バラストタンク? の費用って……どのくらいかかるんですか?」


 ……一人暮らしの俺は、まあまあ貯金はあるし、生活に困っていない。 ……が、見ず知らずの子供に風船を取って上げる為に、何百万、何千万円もささげるほどの余裕は無い。


「軍事費用の徴収などせん。 戦いこそが我等われら衛鬼兵団えいきへいだんの報酬ぞ」

 と女の子が言った。


 「なら、お願いします」と俺は頭を下げて頼んだ。


 総参謀長が答礼し、「これにて、軍議を終える。 各自、戦闘配置に着け」


 ……総参謀長の閉会の辞と同時に『議事ドーム』や参謀たちが瞬時に消え、夕焼け空が戻ってきた。


 俺も女の子も、元の服装に戻っている。 公園の時計を見ると、あれから時間は経過していないようだ。


 ふと、さっきの子供に目をやると、風船を持ち、お母さんと手をつないで、とても嬉しそうな笑顔で家路につく所……だった……!


 おーっ……作戦通り! ……って言うか、想像以上に鮮やかだ!


「我が兵団の威力、思い知ったであろう?」


 「お、お見逸みそれしました……」


 俺はそう言って、女の子……前総司令にお辞儀した。

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