第8話

 情報参謀が「総司令閣下にかれましては、只今の試合、お楽しみ戴けましたでしょうカ?」……と聴いてきた。


 試合? あれが!?


 あれは『試合』じゃ無い! ダジャレじゃ無いけど『殺しあい』だ!


 楽しめる訳が無いだろ〜! 


 ……と、不満を御身おんみを引かれたお見受け致します。 ……その御厚情ごこうじょうは恐悦の極みでございますが、わたしのごと若輩者じゃくはいものに敗北をきっしたとなれば、参謀閣下の名誉に瑕疵かしが刻まれます! ゆえに、何卒なにとぞ再試合の御下知おんげちを賜りますよう、つつしんで言上ごんじょうつかまつります」……と言って平伏した。


 朔也くんは何故なぜさむらい言葉? を使うので、ちょっと何を言っているのか理解出来ない時がある。 


 ……これって一体、誰の趣味なんだろう? ←私(作者)です。


 朔也くんの、一点のくもりもない澄んだ瞳は、常に正面のみを凝視している。


 それはそれで、誠実で素晴しい事だが、それだけでは、この世は生きて行けない。


 余談になるが……1つの事にとらわれ過ぎて身動きがとれなくなってしまった時こそ、肩の力を抜いて周辺あたりを見渡し、出口を見つけ出す必要がある。


 簡単に言ってしまえば、何かに執着する暇があるなら、他に目を向けて人生を楽しみましょ! ……ってことだ。


 ……閑話休題。



 俺はその場で腰を降ろし、朔也くんと同じ目線で語り始めた。


「……朔也くんは、情報参謀が『試合」を始めた理由って判る?」


「……い、いえ……恥ずかしながら……」


「あいつは『未練を絶ち切る』と言って、あの恐ろしい姿になった。 だから、俺はてっきりあいつが『未練の元』である、君か、佐奈ちゃんのどちらかを切っちゃうつもりなんじゃないかと思って、慌てふためいたんだが、それは違っていた」


「……?」朔也くんが、軽く小首をかしげた。


「情報参謀は、あの試合で完全に佐奈ちゃんの『未練』を絶ち切る事に成功したんだ」


 ず、戦場は甘い感傷に浸ったまま足を踏み入れられる場所では無い事を知らしめた。 ……戦場は、常に死と隣合わせだ。


 次に、朔也くんの圧倒的な強さを目の当たりにした。 


 更に、共に遠征しなくとも、会いたい時にいつでも会える事も知り得た。 何せ、司令徽章があれば、どこにでもテレポート可能なのだ。





 ……そう言っても、情報参謀が本当に佐奈ちゃんを切るわけじゃない。 に見せたかったのは、朔也くんの『圧倒的な強さ』だ。

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